働く広場2022年1月号
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掲示があり、生徒それぞれにはマニュアルが用意されている。成形を担当する生徒は、ピザやパンをつくるためのマットを使用しており、それには大きさを測る目盛りがついている。生地の丸め、成形、計量などの分担作業を、生徒が一人でできる工夫がされており、静かな作業風景が授業の質の高さを感じさせる。2021年度からは、食品加工班が、生活クラブ農園で収穫された内ない藤とうカボチャやサツマイモを使って、焼き菓子などを試作し、商品化に向けて取り組んでいる。生産から加工までのダイナミックな工程ができあがりつつある。「生活クラブ農園・あきる野」では、地域の就労継続支援B型事業所の施設外就労も受け入れており、教育・福祉との農福連携の形をつくりつつある。ここでは、生徒が地域で学び、地域をともにつくる営みが見られた。 東京都立羽村特別支援学校は、1973(昭和48)年12月に、東京都における心身障害児希望者全員就学の方針に基づき新設された、知的障害特別支援学校である。西多摩地域と北多摩地域の6市2町の通学区域を持ち、2021年現在、小学部152人、中学部104人、高等部195人、合計451人の都内で2番おり、知的障害教育部門の高等部では、作業学習や授業時間に外部専門家から直接、助言や指導を受けている。 2020年度からは、学校近くにある「生活クラブ生活協同組合・東京」の「生活クラブ農園・あきる野」の農場で、農場責任者である冨とみ澤ざわ廉れんさんに協力をしてもらい、農園芸班の生徒たちが作業している。農園内の直営農場では、江戸東京野菜を中心に、無農薬・無化学肥料栽培を行っている。生徒にとっても安全な環境での作業であり、伝統野菜に触れる貴重な機会にもなっている。取材当日はあいにくの雨になったが、生徒たちは雨除けのテントのなかで出荷前の調整作業を行っていた。いまは、内ない藤とうトウガラシの収穫時期で、畑には鮮やかな赤い色が広がっていた。授業を担当する先生方や農場責任者の冨澤さんは、収穫作物の商品化の作業を通して、生徒の流通への興味を引き出し、だんだんと生徒に生産者意識が芽生え、品質を意識した作業へと変わってきたという。地域の生産場面で働くことで、生徒が働く意義を理解し、作業学習の取組みが充実することがわかる。 食品加工班を訪れると、赤あか澤さわ容よう子こ先生と守もり山やま明あ日す香か先生の指導のもと、生徒たちがチーズパン、ハムコーンパン、あんロールパン、レモンロール、マドレーヌなどの製造をしているところであった。作業室の壁には、分担表や製造目標時間などのかっているから、われわれの職場に必要な人だ」という。 東京都立あきる野学園は、1997(平成9)年4月に開校し、25年目を迎える。肢体不自由教育部門と知的障害教育部門を併置した学校で、小学部、中学部、高等部の学部がそれぞれの部門にある。当時は養護学校と呼ばれていた時代であったが、保護者からの要望もあり、開校当初から通称で「学園」としてスタートした。その後に東京都では部門併置の学校を学園としている。市いち川かわ裕ゆう二じ校長、石いし田だ節とも恵え副校長、進路指導部の山やま﨑ざき達たつ彦ひこ先生と吉よし澤ざわ洋ひろ人と先生にお話をうかがった。高等部の学習では、地域の外部専門家を迎え入れ、授業改善に力を入れている。近年こうした取組みは全国各地で見られるようになった。同学園は早くからこうした取組みを続けて地域で学び、地域をつくるオンライン授業で学び、地域でも校内でも深く学ぶ働く広場 2022.1東京都立あきる野学園(左から)山﨑達彦先生、石田節恵副校長、吉澤洋人先生「生活クラブ農園・あきる野」(写真提供:あきる野学園)市川裕二校長収穫した内藤トウガラシの整理作業パンの成形作業江戸東京野菜の一つである内藤カボチャ食品加工班を担当する守山明日香先生(左)、赤澤容子先生(右)農場責任者の冨澤廉さん23

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