働く広場2022年1月号
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らの新しい学びになると思われる。授業は、ひとり暮らしに必要な食事づくりや掃除、洗濯などの日常生活の力と自己理解を比較しながら、自分はどのような暮らしをしたいのかを仲間と考えるものであった。授業後半では、オンラインで地域の相談支援事業所「特定非営利活動法人秋川流域生活支援ネットワーク」の藤ふじ間ま英ひで之ゆきさんを講師に迎え、「福祉」という言葉の意味と家事援助や自立生活援助などの福祉サービスについて学ぶ姿を見ることができた。できないことがあっても援助や支援を受けて幸せな生活をすることができると藤間さんは生徒たちに助言していた。藤間さんは東京都教育委員会の就労支援アドバイザーも務めており、特別支援学校の授業に助言などを行う役割も果たしている。生徒のニーズや願いを引き出し、生徒自らができる役割と支援や援助を求める方策とともに、生活設計や将来設計を考える授業は成人期の生活に向けて必要な学習内容であろう。外部講師による授業は、いままでは対面で行われていたが、オンライン授業であっても対面と同様の効果を生む可能性があり、新しい授業づくりの工夫を見ることができた。 東京都立青峰学園は、2009年に 高等部の作業学習の一つであるビルクリーニング班の授業があり、堀ほっ田た豊ゆたか先生の説明を聞きながら、2年生と3年生の様子を見学した。2年生は道具の扱い方や清掃方法の基礎を中心に学び、年度の後半から応用として3年生と一緒に用務主事からの受注で校内作業に取り組む。この日は、生徒昇降口と廊下の清掃作業を見学した。コロナ禍で消毒作業も加わって、ますます必要とされる作業となり、職員室や洗面所などの清掃も担当するようになった。生徒たちが清掃の必要性と場所に合わせたさまざまな資機材を使いながら作業態度を学ぶよい機会となっている。また、授業担当の先生方と進路指導部の先生方が連携して、清掃作業を行う企業の特例子会社を見学し、作業方法や社員の育成方法について研修を受けているそうで、授業の充実度に納得した。今後、洗濯作業も取り入れていきたいと堀田先生は話してくれた。 教科「職業」では、神子先生と新居先生による高等部3年生の進路学習の授業を見せていただいた。『LLブック仕事に行ってきます⑩図書館の仕事 祥弘さんの1日』(社会福祉法人埼玉福祉会発行)を教材に、主人公のひとり暮らしの生活を学んでいた。コロナ禍のなか校内のWiーFi環境が整い、生徒一人ずつにパソコンが用意され、教材を見ながら生活設計について学習する姿は、これか目に大きい特別支援学校である。児童生徒全員が通学しているため、スクールバスの台数は12台を数え、教職員も172人になる。2014年度には、開校40周年を迎え、いまの新校舎へと改築した。田た口ぐち克かつ己み校長と進路指導部の新あら居い衣い都と先生、神かみ子こ雅まさ行ゆき先生から校長室でお話をうかがった。高等部は、一学年に60人から70人が在籍し、卒業後の進路先に向けて日ごろから関係機関との連携が欠かせない。ここ数年は卒業生の3〜4割前後が企業に就職している。下校時になると校舎の玄関前に、放課後等デイサービスのお迎えの職員がずらりと並ぶ。担当の先生のマイクによる指示で、生徒がデイサービスの職員へと引き継がれていく。取材日は、全校生徒が一斉に下校する曜日で、障害の重い生徒のみなさんがおだやかに下校していく姿が印象的であった。人権教育を大切にしている日ごろの学習の成果がその姿に現れていた。キャリア教育を充実し、オンラインに対応する働く広場 2022.1東京都立羽村特別支援学校下校時、昇降口には大型のスクールバスが連なる田口克己校長堀田豊先生オンラインで講師を務めた相談支援事業所の藤間英之さん高等部3年生の進路学習の様子廊下の清掃作業進路指導部の神子雅行先生(左)、新居衣都先生(右)24

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