働く広場2022年2月号
11/36

働く広場 2022.2は職場が多少ざわついていても、わりと大丈夫な人が多いのですが、休憩時間は一人で落ち着いてとりたいと望む人もいます。会社側としては、しっかりと休憩時間と場所を確保して、休憩の質を高めてあげることが大事だと考えています」とのこと。現在行っている配慮として、三つの対応例を紹介してくれた。①「休憩は一人でとりたい。日報を書くのを人に見られたくない」というシュレッダー業務担当の社員のために、シュレッダー室内に机といすを用意した。②社内に休憩室はあるが、人の出入りが気になるという社員には、女子更衣室や、空いている会議室に予約を入れて使用してもらう。③「休憩時間を適宜とってください」といわれて逆に迷ってしまう社員には、50分勤務して10分休憩というルールを決めた。また八木さんは、「家族のサポートを得られていない人が、意外と多いとも感じています」と語る。家族が精神障害を認めておらず、その結果、働くうえで協力的ではないケースもあるそうだ。例えば、生活リズムを保てるよう親にサポートを頼んでも、「もう大人なのだから任せている」と取り合ってもらえなかったこともある。私生活まではなかなかふみ込めないため、「日ごろから就労支援機関からサポートしてもらえる状況を維持しておくことが大事です」と八木さん。その一方で、当初の予想とは大きく異なる手ごたえもあったという。「ペースは人それぞれですが、だれもが着実に成長して、戦力になってくれていることを実感しています。入社当初にあれほど『できない』といっていた人も、一人で十分に業務をこなせています。いまは、だれか一人でもいないと業務に支障が出るほど、本当になくてはならない大事な社員ばかりです」精神障害のある社員が増えてきたことにともない、最近、八木さんと同じような支援担当社員が一人増えたところだ。季節や社会情勢などによって、社員が体調を崩すときは重なることが多く、八木さんだけでは、一人ひとりへの細やかな対応がむずかしくなってきたからだという。もちろん受入れ部署では、事前に必ず勉強会を実施し、障害者就業・生活支援センターなどで本人を支援してきた担当者を講師に迎えている。八木さんは、「いまは受入れ部署が5カ所以上に増え、職場の人たちも理解を深めながら、みんなが見守ってくれている環境になりつつあります。しかし社内全体では、障害者雇用に取り組んでいることすら知らない社員も、まだいると思います」という。そのため来年度からは、受入れ部署にかかわらず、就業管理者向けの研修にも障害者雇用のテーマを取り入れる予定だ。これまでをふり返り、八木さんは、「特に精神障害のある社員を雇用するようになってから、一人ひとりの事情に合わせて、就業規則や社内制度を適宜適切に改正しながら対応できたのはよかった」としつつ、障害者雇用への取組みが、職場全体におよぼすメリットも大きいはずだと語ってくれた。「障害者が働きやすく活躍できる職場というのは、子育てや家族の介護、自らの病気など、さまざまな制約のある社員たちにとっても、無理なく働き続けられる職場になると思っています。今後も、多様なバックグラウンドを持つすべての社員が、一緒に活躍できる職場環境づくりに向けて取り組んでいきたいですね」障害にかかわらず働きやすい職場に9

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る