働く広場2022年2月号
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「何人か実習生を受け入れているうちに、おくやで働きたいといってくれる知的障害のある方がいました。それまでにも授産施設にシール貼りなどの仕事をお願いすることはあったのですが、新卒生の受入れは初めてでした。仕事ぶりや性格を見て、『この方だったら』と思い、採用を決めました。今年で働き始めて9年目になる鷲わし津づ卓たく哉やさん(27歳)です。元々はおくやの店舗に勤務してもらっていたのですが、いまはオクヤピーナッツジャパンで、種まきから収穫までの農業全般と、ピーナッツセンターで焙煎の作業や、茹でピーナッツの製造を担当してくれています。そして、2021年にもう1人、特別支援学校から新卒生が入社しました。笑顔が素敵な遠えん藤どう凌りょう介すけさん(19歳)です。店舗で接客を担当してもらっています。株式会社おくやのほうにも1人、障害のある社員がいます」 在学中の2週間の職場実習は、障害当事者にとって就職へ向けての有効な体験であるのと同時に、初めて障害者を受け入れる企業にとっても不安を軽減し、お互いを知る機会になり、ベストなマッチングを生むことになる。 特別支援学校以外にも、さまざまな学 同社の理念は三つ。ピーナッツを扱う豆屋だけに「豆商い3つの心」と謳っている。「一つ目が『豆屋の使命』として、『〈健康で美味しい日本豆食文化〉を伝える心』です。日本は豆をたくさん食べる国です。しかし、私たちが子どもたちに美味しくない豆を食べさせてしまったら、『二度と食べない』といわれてしまいます。『豆って美味しいんだよ』と伝えていくことが、僕たちの使命です。 二つ目は『〈地域農業・産業〉に貢献する心』です。豆を通して、さまざまな人たちとコラボして、地域の農業と産業に貢献していく。町のお菓子屋さんや企業と共同で商品開発をしたり、連携してつくった商品を販売しています。私はそれを『連携型6次化』と呼んでいるのですが、農家さんが一人でやるよりも、さまざまな分野のプロを巻き込んで、にぎやかに商品をつくったほうがうまくいきます。 三つ目は『〈豊かである努力〉の上、人に尽くす利他の心』です。スタッフには心を豊かにするための努力をしてもらい、幸せな社員が幸せな会社をつくっていくことを理念としています」 障害者雇用を始めたのは、株式会社おくやを立ち上げた15〜16年前。松﨑さんが、会津若松市内の特別支援学校を見学したことがきっかけだった。「農業班をはじめ、さまざまな訓練を行っている方たちと話をしました。また、2週間単位で企業で実習を行う仕組みがあることを、初めて知りました。働いている方たちが、とても真面目に黙々と作業している姿に感心し、『弊社の店舗にも来てもらえませんか』とお願いしました。2〜3日では当事者と企業、双方が理解し合うには十分な時間とはいえませんが、2週間来てもらって一緒にごはんを食べたら、お互いのことがわかります。スタッフたちを説得して、実習を受け入れることになりました」 同地区では、一般企業や福祉施設、学校の先生方が一同に会する「会津地区障害者雇用連絡協議会」という会があり、そこを通じて、企業と特別支援学校の先生とのパイプができている。そのため、実習先の企業が多く、ほかの地域の特別支援学校に比べて、雇用に至るケースが倍近くあるそうだ。松﨑さんも理事を務めており、先生方からいろいろと情報を得ているとのことだ。日本の豆食文化を伝え地域の産業と農業に貢献地域の連絡協議会を通して学校・福祉・企業がつながる実習生の受入れは従業員の研修でもある働く広場 2022.2落花生の洗浄作業を行う鷲津卓哉さん店舗での接客を担当する遠藤凌介さん就労継続支援B型事業所での落花生の殻剥き作業22

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