働く広場2022年2月号
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はオクヤピーナッツジャパンのことをご存知で、「今後、業務が増えたら仕事をやらせてほしい」という声もある。松﨑さんは、最終的には40カ所すべてとおつき合いしたいと考えているそうだ。「いまは約200人の利用者さんが、冬場の仕事としてピーナッツの殻剥きをしてくれているほか、ピーナッツパイも焼いてもらっています。シール貼りの仕事は、季節を問わずお願いしています」 約60軒ある契約農家の畑仕事のお手伝いに、4人一組で、うち1人が支援員というチームを組んで、行ってもらうこともあるそうだ。賃金については、松﨑さんが間に入って金額を調整する。そうすることでトラブルが減り、農家からはピーナッツ以外の畑仕事の依頼も増えてきたという。「助かる」という声以外にも、「孫のような若い人が来てくれて楽しい」という声もあり、10年以上のおつき合いになった農家もある。「仕事がない」という福祉事業所と、「人が足りない」という企業。マッチングさえうまくできれば、両者の問題は解決できるのだ。 次に、店舗と工場を訪れ、2人の働く当事者の方にお話をうかがった。終わるころには、彼らの成長ぶりを見て泣いて別れるほどです。普通に働いていると、そんな経験はなかなかないですよね。それをくり返すうちに、受入れ体制が整ってきました。受入れに際しては、特にキーパーソンがいるわけではありませんが、店長がみんなのメンターとなってくれています」 そして次の松﨑さんの言葉は、特に印象的だった。「障害のある方たちを受け入れて感じるのは、彼らの働きぶりから気づかされることが非常に多いということ。彼らは商品やお客さまに、100%の気持ちで向き合っている。私たちは果たして、そこまでの気持ちを持って仕事をしているだろうかと、考えさせられます」 障害者雇用は従業員の育つ環境、育てる環境をつくることができる。これは障害者雇用が法定雇用率によって雇用の機会を拡大するというだけでなく、企業にとって新たな気づきを与える可能性を持つことを示しているといえるだろう。 現在、つき合いのある福祉施設のうち、就労継続支援B型事業所は15カ所だという。会津地域には約40カ所の就労継続支援B型事業所があり、多くの事業所校からの実習を受け入れているが、「なかでも特別支援学校の生徒たちは素直さが抜群。仕事に臨む気持ちもすばらしく、伸びしろが大きい。もちろんたいへんなこともありますが、『小さな階段』をつくって仕事を覚えてもらっています。得意不得意は必ずありますので、苦手な仕事を無理にやらせるのではなく、障害特性を理解するよう心がけています」と松﨑さんはいう。1回ではできないことが多いため、階段のように「今日はここまで」と、一段一段、つき添いながら教えていくのである。 同時にまた、受け入れる側の体制も大切で、そこがきちんとできていないと、せっかく入社してもすぐに辞めてしまう。実習生の受入れというのは、受入れ側の研修にもなったようだ。「私は障害者雇用を前提に考えていたのですが、最初は社員やパートさんから『小さな会社なので目が行き届かないのではないか』と不安の声が出ました。そこで『2週間の実習で様子を見てみよう』、ということになったんです」と松﨑さんはふり返る。 実際に、一人目の鷲津さんについては、雇用に至るまで6年かかっている。「毎年実習生を受け入れていました。女性のパートさんたちが実際に彼らと接する機会が多かったのですが、2週間がマッチングさえうまくいけば福祉と企業の課題を解決できる働く先輩の姿が目標〜入社1年目の遠藤さん〜働く広場 2022.2ピーナッツ味のソフトクリームを巻く遠藤さん薄皮を残すために、一つひとつ手作業で殻を剥く左が乾燥や焙煎を行うピーナッツセンター。そのとなりに「ピーナッツ村」をつくる予定だ23

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