働く広場2022年2月号
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働く広場 2022.2では2時間の作業で70個完成させる作業者もいます。森林組合がノルマを設定せず継続して仕事を供給していること、障害者が楽しみながら安全に仕事に取り組めるよう事業所スタッフが寄り添うこと、県が作業に必要なたらいや照明器具などの道具の導入を支援していることなど、林業・福祉、行政機関各々が長期的に丁寧にかかわってきたことで1年半以上の委託が可能となっています。森林組合職員は「いつか植樹祭を開催して彼らにも参加してほしい。地域の活性化にもつながる」と話していました。日本は森林が国土の約7割を占めており、林業及び木材産業は、就業機会の創出と定住促進などを通じて、地方の経済社会の維持・発展に寄与する極めて重要な産業です。しかし、林業従事者は減少傾向で、担い手不足が心配されています。そのようななか、障害者が林業・木材産業で活躍し、生きがいをもって社会参画する「林福連携」が各地で取り組まれています。林業というと一般に足場が悪く重量物を扱う作業が多いことから、障害者が従事するのは危険で難しいと考えられがちですが、きのこ栽培や苗木生産、木材加工など、障害者を雇用する福祉サービス事業所(以下、「事業所」)などで取り組める林業・木材産業の仕事は実は多くあります。その一例を紹介します。三重県の「森林組合おわせ」は、山に植えるヒノキのさし木苗ポット製作を複数の事業所に委託しています。生分解性の小さな袋の底に荒い土を、その上に細かい土を入れる作業です。苗木を乾燥させないよう袋を20回振り、完全に隙間がなくなるまで袋を土で満たします。委託先の一つ、紀き北ほく作業所を訪ねると、三人の作業者が歌を歌いながら作業していました。かつてこの森林組合では、職員が夜間までさし木苗ポットの土入れ作業をしており、担い手を探していました。一方、作業所は持続的に担える仕事を探していました。作業所に話をもちかけ、丁寧に手順を説明したところ、委託が決まり、スタッフが障害者の能力に応じて作業の切り出しや割り振りをしながら実施してきました。今林福連携の事例林業・木材産業と福祉の連携について作業者がヒノキのさし木苗ポットの袋に土を詰めている様子さし木苗ポットで育った苗木※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています省 庁林福連携の可能性について林野庁 林政部 経営課 林業労働・経営対策室26

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