働く広場2022年2月号
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働く広場 2022.2障害者雇用に魅せられて   〜医療機関・公務部門・健康経営〜医療機関の障害者雇用ネットワーク代表 行政官として障害者雇用にかかわった当時、障害者雇用に魅せられた多くの企業OBのみなさんに出会いました。現職を離れても、別の会社や支援機関で活き活きと活躍される姿を拝見し、短期間の異動が宿命のわが身には、とても羨ましく感じられたものです。「人を活かす仕事」が自分の生きる力にもつながることを、みなさんとのつき合いのなかで知ることができました。その後、内閣府で政府全体の障害者施策にかかわり、国立がん研究センターでは事業主の立場で障害者雇用に取り組んだ経験もふまえ、厚生労働省を退職すると同時に「医療機関の障害者雇用ネットワーク」を立ち上げました。 当ネットワークは、医療という業種内で障害者雇用のノウハウを共有する取組みです。一般に製造業やサービス業では取り扱う製品やサービスにより作業の工程や内容も異なりますが、医療機関はどこも同じような仕事をしています。このため、一つの医療機関で開拓した職域やノウハウは、そのままほかでも使える汎用性があります。医療機関に着目した理由は、こうした「横展開」が容易な点にあります。 医療の仕事は患者の命にかかわるため、「医療機関には障害者ができる仕事はないのでは」といわれがちです。しかしながら、国立がん研究センターや奈良県立医科大学などの先行事例からも明らかなように、実際には、医療機関は障害者がになう仕事の「宝庫」です。事務系の業務はほかの産業分野とも共通し、他産業で蓄積されてきたノウハウが活用できます。医療系の業務は医療機関に特有ですが、種類も量も膨大なものが院内に存在し、この分野での職域開発が障害者雇用を成功させる「鍵」となります。 医療系の業務での職域開拓のポイントは、タスク・シフティングの視点で、医療職の「働き方改革」の一環に障害者雇用を位置づけることです。看護師の仕事のうち国家資格が不要な業務は看護補助者が実施できますが、このうち直接患者と接しない定型的な作業では、患者との接触がむずかしいと思われる知的障害や精神障害のあるスタッフも戦力になれます。こうした業務を障害者雇用で分担できると、多くの業務を抱え余裕なく働いている看護師からは、「患者さんに接する時間を増やすことができる」と感謝されます。薬剤師や検査技師などほかの専門職の業務からも、定型的な業務はいくらでも切り出すことができます。当ネットワークのホームページでは、医療系のさまざまな業務で障害者が活躍している事例を多数紹介しています。 障害者雇用が専門職の「働き方改革」につながることを理解するには、実際に障害者が戦力として活躍している医療機関を見学し、同じ専門職から話を聞くことが効果的です。このため、当ネットワークで職場見学を案内する際には、専門職からも障害者雇用の効果について話医療機関は仕事の「宝庫」医療職の「働き方改革」につなげる依田晶男2

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