働く広場2022年2月号
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働く広場 2022.2につながる「多様性」の理解にも、障害者雇用の視点やノウハウはたいへん参考になります。障害者雇用をコンプライアンス問題として受け身にとらえる企業も多いですが、障害者雇用率達成だけが目的だと、障害者雇用ビジネスに委ねて、実態のともなわないものも出てきます。 しかしながら、私自身が組織の経営者として、また、企業の健康経営をサポートするなかで感じるのは、障害者雇用には企業の進化に役立つヒントが数多くあることです。障害者雇用を積極的に進める企業の経営者や担当者のみなさんと出会うたびに、この思いは強まります。これからも新たな出会いとネットワークづくりを通じて、障害者雇用の意義を発信し続けたいと思います。 1981(昭和56)年、厚生省(現厚生労働省)に入職。1997年から2年間、障害者雇用行政に従事。2010(平成22)年の国立がん研究センターの独立行政法人化に際し、障害者雇用プロジェクトを立ち上げ、医療機関の障害者雇用に取り組む。2015年に厚生労働省を退職し、「医療機関の障害者雇用ネットワーク」を設立。ホームページ(https://medi-em.net E-mail:mediem.net@gmail.com)で情報発信するほか、公的病院グループや医療団体などで講演し、医療機関の障害者雇用の普及に努めている。 2020年「夢をつなぐDoctor’s Network」を結成し、障害のある医師の経験やノウハウを伝える活動にも従事している(https://dream-doctor.net)。 現在は、約1800社が加入する医療保険者において、加入企業の健康経営の取組みを支援している。精神保健福祉士。依田晶男(よだ あきお)をしてもらっています。 規模の大きな病院で障害者雇用を進める場合は、専任のジョブコーチをつけてチームを組んで配置し、院内各所から業務を引き受ける方法をすすめます。どこの病棟にも同じような仕事があるので、集約化のメリットが大きいことに加え、チームによる就労だと仕事の種類も多彩になり、個々のスタッフに適した作業を割り当てられるからです。「やってもらうと助かる仕事」を専門職から切り出し、最初は5人程度のチームから始め、仕事のできばえを見ながら仕事の量や種類を増やし、雇用人数に応じてジョブコーチも増やしていけば、「働き方改革」に資する障害者雇用が自然に実現できます。 こうしたチーム就労の形態は、特例子会社を中心に普及してきましたが、特例子会社を設立した企業のなかには、企業立の病院を運営しているところも少なくありません。病院の障害者雇用を進める際に、同じ企業グループ内の特例子会社のノウハウや資源を活用できることは、大きな「強み」でしょう。まだ数は少ないですが、グループ内病院の障害者雇用をサポートする特例子会社の輪が拡がることも期待します。 当ネットワークには、障害者雇用を進める医療機関、サポートする支援機関など多数の方に参加いただいています。情報共有がメインなので、ぜひ、ホームページをご覧ください。 当ネットワークのホームページでは、「公務部門の障害者雇用情報サイト」も掲載しています。世間を騒がせた官公庁の障害者雇用率の不適切算定問題は、障害者雇用行政にかかわった者として心が痛みました。現場で苦労されるみなさんの役に立ちたい思いで、国機関の障害者雇用担当者研修の講師を引き受けました。3年間で12回、延べ250人ほどの国家公務員に、公務部門の特性をふまえて講義し、その内容をサイトで公開しています。公務部門の障害者雇用に関する制度、事例、Q&Aなど現場に役立つ情報を掲載しているので、公務部門や支援機関のみなさんに活用いただければと思います。 企業の間で関心が高まっている「健康経営」は、社員の健康への投資が生産性向上や企業価値を高め、企業の発展につながるという考え方です。職場のメンタルヘルス環境も大きく関係するため、精神・発達障害に関する障害者雇用のノウハウが役立つことを感じます。SDGsチーム就労が効果的な職場公務部門の障害者雇用健康経営にもつながる3

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