働く広場2022年2月号
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働く広場 2022.2密文書のシュレッダー業務だった。採用条件については、「就労支援機関を利用していること」、「会社が実施する情報セキュリティ研修の内容について一定の理解ができること」などとした。また、必ず採用前に5日以上の職場実習を行い、会社独自の「職場実習チェックシート」などで評価しながらマッチングを見きわめることにした。さっそく、ワークセンターから紹介された発達障害のある男性1人が2016年に入社。障害者職業センターからジョブコーチを派遣してもらい、1日4時間のパートタイム勤務から開始した。慣れてくると、取引先に納品する印刷物の倉庫管理や、各部署からの文書回収作業も加わり、数カ月後にはフルタイム勤務になった。シュレッダー業務については、あらためて手順書などを可視化し、シンプルにするなどして業務の標準化を図った。社内のシュレッダー用文書の回収箱にも「分別表」を貼る工夫をしたそうだ。八木さんは、「回収作業をしやすいようにと、現場のほかの社員たちが考案してくれたものです。私たちも職場でシュレッダー用紙を箱に入れるとき、素材によってどちらに入れたらよいのか容易に判断できるようになりました」と職場全体への効果を語る。 シュレッダー業務を担当する社員を採用後、同じ2016年にプログラマー2人も採用した。それ以降、IT技術者として現在までに計8人を採用している。うち1人は、大学院の在学中に通学できなくなり、発達障害と診断されたという。その後、就労移行支援事業所に2年ほど通っていたところ、高崎市内にある障害者就業・生活支援センター「エブリィ」を経由してジーシーシーに紹介され入社。パートタイム勤務を経て嘱託社員になった。日ごろはバス通勤だが朝夕1本ずつしかないため、会社側は、バスの時間に合わせ柔軟に勤務時間を調整した。職場ではプログラミング業務を担当。納期が迫っているとあせって思うようにいかなくなる傾向があるため、納期に左右されない案件にかかわっている。一方で、一つの課題について想定されるリスクを詳細に提示するなど、大学院で学んだ知識をいかんなく発揮しているそうだ。八木さんによると、「身だしなみに無頓着な面もあったのですが、エブリィの支援担当者が、一緒に自宅での洗濯ルールを決めたり、着替えの服を買ったりして改善しました」という。また別の1人は、新卒採用による正社員で、大学を卒業後入社した。面接時に自ら発達障害であることを伝え、「会議などは集中力が途切れない午前中に」といった配慮事項を願い出たそうだ。AIなど最新技術を使ったシステム開発などの部署で活躍しているが、ニュースなどを見てその内容に影響を受けやすく、体調を崩して休んでしまうこともあるという。発達障害や精神障害のある人には、通院などで突然休まざるを得ないケースが少なくないとわかり、同社は2020年、就業規則に「障害者通院休暇」を加えた。障害者手帳を持っている社員は、通院の際に年間6日まで、1時間単位で取得できる。八木さんは「精神障害にかぎらず、透析を受けている社員などにも活用の幅が広がっています」と説明する。 精神障害のある人の採用には、ケースによって、まずは総務部で実習的に働いてもらい、基本的な社内ルールや仕事の手順、報告書の作成などを身につけても入社後の指導の工夫プログラマーとして能力発揮シュレッダー業務の様子(写真提供:株式会社ジーシーシー)総務労務グループの大久保淳さん素材ごとの投入先が表記された「分別表」(写真提供:株式会社ジーシーシー)6

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