働く広場2022年3月号
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働く広場 2022.3︱︱大手人材サービス企業﹁マンパワーグループ株式会社﹂の特例子会社﹁ジョブサポートパワー株式会社﹂は、障害のある社員157人のうち約7割が在宅勤務者だそうですね。経緯を教えてください。 2001︵平成13︶年に設立された当社は、2003年に特例子会社として認定され、翌2004年から在宅勤務者の採用を始めました。理由は、募集した事務系の人材がなかなか集まらないなかで「在宅なら働ける」という重度の身体障害のある方が少なくなかったからです。当初は、まだインターネット環境が整っていなかったので、新聞の切り抜きや軽作業などを担当してもらいました。 在宅向けのテレワークを本格導入したのは2010年ごろです。パソコンを貸与し、光回線のネットワーク環境も会社負担で整えました。現在は障害のある社員157人︵身体障害130人、知的障害3人、精神障害24人︶のうち、109人が在宅勤務者です。仕事内容は、大部分が親会社からの委託業務で、データ入力や経理、システムサポートなどさまざまです。 在宅勤務者は、北海道から沖縄まで全国31都道府県に散在しているため、定期的に対面の交流会を開催してきました。東京や大阪や福岡などに集まるのですが、「ついでに旅行も」と楽しみにしている社員もいます。これは、コロナ禍がおさまったら再開したいですね。――障害のある社員のために、会社側としてどんな支援をされてきましたか。 まず福利厚生面においては、当初から「定期通院制度」を導入しています。月2回まで通院目的の有給休暇が取れます。安定して働いてもらうことが、会社にとっても大きなメリットになりますから、通院も仕事の一環ととらえています。また、訪問介護やリハビリ時間が必要な障害のある社員は、休暇を取った時間の業務を別の日に振り分けたり、フレックスタイム制度などを活用したりしています。 在宅勤務者は入社後、オンラインでの研修やOJTを経て担当業務をスタートします。ほとんどの人はパソコン使用経験がありますが、それ以上の専門知識や特別な技能がなくても大丈夫です。必要に応じてeラーニング教材も活用しています。特に重度の身体障害のある人の場合、それまで一度も働いたことがなかったり、中途障害を負ってから初めて就職したりしたため、「自分に何ができるのかわからない」と不安に思っていることが多いようです。少しずつできる仕事が増えて自信をつけ、自己効力感も高まっていく様子を見ながら、一人ひとりに合ったキャリア形成をうながしています。在宅勤務とキャリア支援で、選べる働き方をジョブサポートパワー株式会社 前代表取締役、エグゼクティブ・アドバイザー小川慶幸さんおがわ よしゆき 1961(昭和36)年、神奈川県横浜市生まれ。1993(平成5)年マンパワー・ジャパン株式会社(現マンパワーグループ株式会社)に入社、2005年西日本地域本部長、2006年マーケティング本部長、2007年人材紹介本部長を経て2008年にジョブサポートパワー株式会社に出向、事業本部長を経て2015年代表取締役、2021(令和3)年4月より現職。約7割が在宅勤務通院制度は月2回まで14

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