働く広場2022年3月号
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働く広場 2022.3をふり返って話してもらいました。動画を録画してオンデマンドで観られるので、多くの社員が参考にしたようです。刺激を受けて、今年は群馬県在住の社員が、「表計算」種目で第41回全国アビリンピックに出場しました。そのほかに、地方大会に出場した社員もいました。――最後に、いまの課題や今後の抱負をお聞かせください。 私たちは、職場内における相互理解をもっと深めたいと考えています。障害のある社員が9割以上を占める当社では、さまざまな障害のある社員たちが混在し、互いの障害特性をしっかり理解できていないところからくる軋あつ轢れきが生じてしまうことがあります。そこで、昨年から行動指針に掲げているのが「対話による意思疎通と相互扶助」です。社員同士が互いに助け合い、主体的に支え合っていける会社を目ざしていきます。 そして、社員が主体的にキャリアをつくっていけるような仕組みを、会社として今後も充実させていくつもりです。本人のためになる支援や応援をしながら、社員が自ら積極的にチャレンジできる職場環境にしていきたいと考えています。障害の有無にかかわらず、いろいろな選択肢から自分の働き方を選び、自分らしいキャリアの道を選べることが理想ですね。――キャリア支援について、具体的な取組みを教えてください。 定期的に行っている面談で、本人の課題設定をもとに、キャリアアップの道筋を一緒に考えていきます。社内ではおもに、リーダー登用と専門職への道がありますが、社外で違う道を模索したいという人もいますね。会社側の私たちも、現状の職場では、本人の努力や能力・意欲を活かしきれないという限界も感じていました。 そこで5年前に始めたのが、転職をバックアップする「キャリアトランスファー制度」です。転職を希望する障害のある社員と、おもに取引先のなかで人材を探している企業をマッチングさせるというものです。本人と企業側、双方の状況をわかっている私たちが橋渡し役になることで、スムーズに進められます。これまで30人以上が転職を成功させてきました。 一方、社内でキャリアアップしていきたいという障害のある社員のために、昨年から年2回の「社内公募制」をスタートさせました。「新しい職種に挑戦したい」という社員が活用しています。例えばある社員は、もともと一般事務の担当でしたが、独学で勉強して「IT部門でホームページを制作したい」と手をあげました。これまで4人が応募し、2人が選考を通って異動しました。 こうしたキャリア支援において私たちは、本人の意欲が何より大事だと思っています。じつは以前からリーダー登用も実施していたのですが、過去の職歴や経験から会社側が判断し、よかれと思って登用しても、本人の意思や意欲とずれていたために失敗したことがありました。いまリーダーに登用している障害のある社員は、未経験者ばかりです。「昔は入社がゴールで、その先は想像すらしていなかったのに」とふり返りつつ、リーダー登用や社内公募に自ら手をあげる人が増えていて、大きな手ごたえを感じます。 ――アビリンピックに挑戦する社員も出てきていますね。 2年前、アビリンピックにIT系の種目があるのを見つけて、社内で挑戦できそうな人たちに紹介してみたところ、長野県在住の小こ松まつ智とも和かずさんが「来年やってみます」といってくれました。車いすユーザーの小松さんは2012年に入社して以来、システムサポート業務でスキルを上げていました。アビリンピックに向けては、自分で競技内容を調べて入念な対策をしたようです。前回の第40回全国アビリンピックに出場し、「データベース」種目で銀賞入賞を果たしました。 大会後は、月1回開催している社員同士の学びの会「ラーナビリティ」で、小松さんに大会「キャリアトランスファー制度」アビリンピック出場者の活躍が刺激にキャリアの道を選べる環境15

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