働く広場2022年3月号
18/36

働く広場 2022.3※1 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html最終回最終回ジョブコーチ支援ジョブコーチ支援 障害のある人が長く働き続けるためには、ジョブコーチによる支援から、職場での「ナチュラルサポート」への移行が不可欠となります。 本連載の最終回は、「ナチュラルサポート」について、常ときわ磐大学准教授の若林功さんにご執筆いただきました。常磐大学 准教授 若わか林ばやし功いさおさんクローズクローズアップアップ これまでの連載2回はジョブコーチによる支援の実際を、「ナチュラルサポート」という言葉を交えて紹介してきました。いずれの事例でも「ナチュラルサポート」がポイントとなっていました。それでは「ナチュラルサポート」とは何でしょうか。 厚生労働省のウェブサイトによればジョブコーチ支援の内容について、「ジョブコーチが行う障害者に対する支援は、事業所の上司や同僚による支援(ナチュラルサポート)にスムーズに移行していくことを目指す」とされています(※1)(図)。つまり、ナチュラルサポートとは、障害のある人を雇用している事業所の上司や同僚から(つまりジョブコーチなどの雇用や福祉サービスの専門家ではない人から)障害のある人へ提供されるサポートということとなります。具体的な例として、「作業のやり方を根気よく教える」、「食券の買い方を教える」、「励ましの声かけをするなど情緒面から支える」などがあげられます。 なお、この厚生労働省のウェブサイトの説明から、ジョブコーチなどの雇用支援や障害福祉サービスの専門家(以下、「専門家」)によるサポートと、事業所の上司・同僚のサポートが対比的であることがわかります。また、ナチュラルサポートの「ナチュラル」という言葉が何を意味するのかについてはより詳細な議論が必要なため(例:「自然さ」、「さりげなさ」は不可欠な要素なのかなど)、ここでは最大公約数的に、ナチュラルサポートとは「事業所の上司・同僚から提供されるサポート」として、説明します。 では、なぜこのようなナチュラルサポートが必要なのでしょうか。専門家のみがサポートを提供するということではいけないのでしょうか。 ナチュラルサポートの必要性についてはいくつかの理由が考えられます。 一つは基本的な理念の問題です。だれしも職場などで上司・同僚からのサポートを受けることがあるはずです。そして、障害のある人であってもその職場の一員としてサポートを受けたり、ときには逆にサポートを提供したりすることは、職業を通じた「ノーマライゼーション」、「インクルージョン」実現の一つの要素と考えることができるのです。 第二に、上司・同僚という、専門家ではない人たちからのサポートを受けることで、障害のある人たちの職務満足度や、所属組織への愛着(組織コミットメント)などが高まるというメリットがあるためです。そしてこれら職務満足度や所属組織への愛着が高まることは、職場定着につながると考えられます。 第三に、着実に障害のある人の雇用(新規就職や職場定着など)が進んできているなかで、専門家のみで職場定着支援サービスを提供するのは、就労支援機関の数や専門家の数といった点からも困難であると考えられるためです。~ナチュラルサポートをめざして~~ナチュラルサポートをめざして~ナチュラルサポートとはなぜナチュラルサポートが必要なのか16

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る