働く広場2022年4月号
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働く広場 2022.419りごとが起こらないケースもあります。しかし、残念ながら、うつ病や適応障害でクリニックを受診したら、根幹に発達障害が見つかった……というケースがとても多いのが現状のようです。いまの日本は、発達障害のある人が適応しやすい環境にないように思われます。 すでに二次障害を引き起こしてしまった人は、これ以上悪化させないようにするしかありません。そのためには、職場でも工夫が必要です。まずは職場の人が発達障害とその人の二次障害についてよく知ることです。二次障害の原因の多くはストレス。そのため、二次障害のある人に無理な残業や合わない作業を依頼するのはやめたほうがよいでしょう。また、二次障害を隠している人もいます。そして、そんな人はどこかでSOSを出しています。「最近この人ミスが多いな」、「体調が悪そうだな」。そう思ったときはさり気なく「仕事の分量大丈夫?」とたずねてみたり、場合によっては相談に乗り、仕事内容や分量を調整することをオススメします。二次障害の悪化は、仕事のパフォーマンスが落ちるので会社にとっても不利です。うまく働けるよう、発達障害だけでなく二次障害についても認知が広がってくれればと思います。 発達障害のある人は、その生きづらさのストレスから何らかの二次障害を併存している場合が多いようです。現に私も、双極性障害と摂食障害を併存しています。いままで私が取材してきた当事者の約9割が適応障害やうつ病、睡眠障害など何らかの二次障害を起こしていました。じつはこの二次障害、発達障害の特性そのものよりも厄介なんです。 私のように双極性障害があったら、うつの時期はとてもじゃないけれどベッドから起き上がれません。私の場合フリーランスなので、ちょっと回復したときにささっと仕事にとりかかれますが、会社に勤めている人は休職せざるを得ません。そして私がもう一つ抱えている摂食障害。拒食症と過食症をくり返すことが多い障害で、拒食症だった時期はいまよりも体重が10㎏も軽く、その分体力も落ちていました。そしてしばらく経ってから過食嘔吐が始まってしまいました。これは私のなかに「痩せて綺麗でいないといけない」という認知の歪みがあることが原因です。発達障害のある人のなかには、ものごとを「ゼロか100か」で考えてしまう「ゼロヒャク思考」の人が多く、私もゼロヒャク思考です。このゼロヒャク思考は摂食障害を引き起こしやすいといわれています。いまはちょうど過食の時期で人生で一番太ってしまったので、今度こそ健康的に痩せようと炭水化物を控えたり、エクササイズをしたり、時間のある日は軽くランニングをしたりしています。 私の友人で発達障害のある女性は、仕事が合わずに二次障害のうつ病を発症し、半年ほど休職していました。また、その女性も私と同じように摂食障害を併存しており、毎日縄跳びをして過激なダイエットに励んでいました。しかし、BMI(体格指数)で見ると、その女性は「痩せ」のゾーンに入る人でした。拒食症の人の多くは痩せているのに自分が太っているように感じてしまうのです。 このように、発達障害は特性そのものよりも二次障害のほうが生活するうえで深刻な被害をもたらしてしまうのです。そのために、発達障害の特性があるとわかったら、まずは二次障害を引き起こさないことが重要となってきます。二次障害を引き起こさないためにはストレスフリーの生活と、自己肯定感を高めて自分らしく生きる必要があります。そのためには環境がキーポイントです。例えば、発達障害の特性が垣間見える人でも、環境に適応できているため困発達障害当事者の働きづらさのリアル第4回~発達障害自体よりも厄介? 二次障害とのつき合い方~姫野 桂姫野 桂(ひめの けい)フリーライター。1987(昭和62)年生まれ。宮崎県宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブ媒体などで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ、など。おもな著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)などがある。

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