働く広場2022年4月号
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学校全体で進めており、2020(令和2)年に「子供の読書活動優秀実践校」として文部科学大臣表彰を受けている。校内の図書室の入り口にはさまざまな本が紹介文とともに掲示されていて、生徒たちが本に興味を持ち、「読んでみたい」という思いを育める仕組みがつくられていた。あらためて読書の大切さを感じる機会となった。 渡り廊下を進んだ先には、生徒たちがパソコン作業や検品作業に真剣に取り組む「職業実践室」があった。ここは事務作業訓練の場。実際のオフィスさながらの環境がそこにはあった。所狭しとさまざまな商品が並べられているなか、書類に書かれた商品の検品を行い、先生へ報告する。作業時間を計り正確性やスピードが求められる。ここでは先生は上司であり、学校ではなくオフィスであると指導している。休憩は自分の決めたタイミングで隣の休憩室にてお茶を飲むなどして過ごす。休憩の取り方、言葉遣いや態度も会社で通用するマナーが必須のようだ。 元商社マンの関せき教のり光みつ先生が、社長として生徒たちの指導にあたっている。ピッキング作業で扱う商品数は12種類5570分かれ、自分が読んだ本を手に5分間でその本の魅力をプレゼンテーションする。ほかの生徒はプレゼンテーションを聞きながらいくつかの観点で評価し、最終的にほかの生徒に一番「読みたい」と思わせた人がチャンピオンになるという。女子生徒の発表が始まると私はすっかり聞き入ってしまい、紹介してくれた本をぜひ読んでみたいと感じた。 本を読むことで、生徒たちは生きる力を育んでいるように思えた。自分の世界の小ささや考えの浅はかさを感じ、自分の進むべき道を軌道修正したり、「これでもよかったんだ」と自己肯定をしたりと自己成長につながっているのではないかと感じた。さらにこのビブリオバトルを通じて、自分の思いを相手に伝えるプレゼンテーションの力をつけることができる。 佐々木先生からは「読書を通じて社会に目を向けてほしい」という生徒への熱い思いをうかがった。読書の取組みは 私の所属するサントリーグループでは、特別支援学校を卒業した知的障がいのある社員が東京と大阪で活躍しており、今後全国の事業所においても障がいのある人と働くことがあたり前となる職場を目ざし、各地で採用活動をスタートしている。そのなかで東北エリアでの採用にあたり接点ができた「宮城県立支援学校小こ牛ご田た高等学園」(以下、「小牛田高等学園」)と「宮城県立支援学校岩いわ沼ぬま高等学園」(以下、「岩沼高等学園」)を訪問し、取材した。両校の取組みについて紹介したい。 まずは小牛田高等学園を紹介したい。校内は、加か藤とう隆たか弘ひろ先生と佐さ々さ木き幸こう司じ先生にご案内いただいた。 最初に、2年生の「ビブリオバトルに挑戦!」の授業を見学した。「人を通して本を知る」と題し、数名のグループに小牛田高等学園のビブリオバトル授業を見学校内に会社働く広場 2022.4加藤隆弘先生(左)、佐々木幸司先生(右)ビブリオバトルでは、三人一組となり、お気に入りの本を紹介し合った「職業実践室」には2万点を超す商品が並べられている作業学習で指導にあたる関教光先生宮城県立支援学校小牛田高等学園★本誌では通常「障害」と表記しますが、平岡典子編集委員の希望により「障がい」としています卒業後を見すえた、実践的で具体的な取組み自ら考え、自らやってみる機会を与える寄宿舎での生活を通じて自立に向けた支援を図る123POINT21

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