働く広場2022年4月号
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とを述べたいと思う。 私には、中学2年生になるダウン症の息子がいる。現在の障がい者雇用の仕事にたずさわる前は、息子の自立について考えたこともなかった。息子が何歳になっても寄宿舎や寮に入れるといった選択肢はまったくなかった。その背景には、何歳になっても一緒にいたいという気持ちもあったが、一人で生活することができるようになることが想像できなかったことがある。 親として障がいのある子どもを家から出して、別の場所で生活させると決断することはとても勇気のいること。 発達がゆっくりな息子に対し、幼少期は着替えや食事など身の回りのことにかなり手を出し、生活をしていた。できないのだから、仕方がない。私が面倒をみればよいと考えていた。息子を自分の手のなかで守ることしか考えていなかった。 しかし、転機は息子が9歳のときにやってきた。私が企業にて知的障がい者の雇用にたずさわるようになり、息子のために「よかれ」と思って行ってきた〝守る〞というサポートが、彼の将来の可能性を狭めてしまっているということに気づいたのだ。 知的障がいのある人が社会で活躍するために大切なことは、小学生・中学生から親がすべてを抱えサポートするのではなく、子どもたちが自分のことを自分ででら自分のことも主張でき、適切なコミュニケーションが取れるよう指導されている。 また、寄宿舎には一人暮らし体験ができる部屋「生活体験室」があり、寄宿舎で通常行っている掃除・洗濯に加え、食事づくりにもチャレンジする。自分でメニューを決め、買い物を行い、調理するという経験だ。高校生の段階でここまで経験するとは非常に驚きであった。 次に岩沼高等学園の寄宿舎を紹介したい。こちらは学校の校舎とつながった建物となっていた。庄司先生にご案内いただいた。 基本的な指導については前述の小牛田高等学園の寄宿舎と同様であるが、特徴的な部分としては、一人暮らし体験をするワンルームアパート「生活訓練棟」が、学校の敷地内に存在することだ。生徒はこのアパートで一週間、日常生活の時間管理から掃除・洗濯・食事のすべてを一人で行いながら学校生活を送る。 これらの寄宿舎での経験は、障がいのある子どもたちにとって将来の社会参加・自立の可能性を拡げる素晴らしい取組みであると感じた。 今回、宮城県の二校を取材させていただき、障がいのある子どもたちの将来の自立について大切であると考えているこで、その後朝食を取り、8時に登校という毎日を送っている。 起床後にまず清掃をするといった日常は家庭ではなかなかできない。生徒たちにとってはたいへんな朝のルーティンだが、この毎日の積み重ねが、生徒たちの心までも大きく成長させているのだろうと感じた。 寄宿舎での生活は年間160泊ということや、週末には生徒たちは家庭に戻ることを考慮し、寄宿舎を生活指導の場ととらえ、他者に対する礼儀、一定の距離感なども大切に指導しているようだ。 寄宿舎生活を通して、基本的な生活習慣を身につけ、自分のことは自分で行う必要性を感じ、実践できるようにすること。集団生活維持に必要な時間やルールを守り、自分の役割を主体的に果たすこと。自分中心にならないよう、ある程度我慢することを経験させる。その一つに、現代の子どもたちには少し酷のようだがデジタルデトックスの環境とし、個人のスマートフォンやタブレットは使用不可としている。そのような環境で、周囲とよりよい人間関係を築くために、他者を尊重しなが自立について働く広場 2022.4小牛田高等学園寄宿舎の食堂宮城県立支援学校小牛田高等学園寄宿舎小牛田高等学園寄宿舎の浴室小牛田高等学園寄宿舎で指導にあたる鈴木紀之先生二人で利用する舎室が自室となる洗濯やアイロンがけなども自分自身で行う舎内の「生活体験室」では、一人暮らしを体験できる24

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