働く広場2022年4月号
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自分でやってみたいという思いを育むこと。やってみたいと本人が思えば努力もするし、人は成長するのだと思う。できなかったこともできるようになり、その喜びが次のチャレンジにつながり、自信になる。このサイクルを回していくことが大事だと考える。私自身親として、息子にこのサイクルを回せるように努力していきたいと、今回の取材を終えて、あらためて考えている。 私はいま、一緒に働く知的障がいのあるメンバーたちに「支えてもらっている、新たな気づきをもらっている」と感じることがよくある。またそれぞれ、私にはない〝すごい〞と感じるところや、尊敬するところがたくさんある。メンバーと過ごす時間は私にとっては大切な時間。障がいのある人は周囲に支えてもらうという一方的な関係だけではなく、逆の関係性も当然生まれてくる。メンバーと接していると障がいがあっても、だれかを支えることができたという経験が、自信になり、成長を加速させていると感じることも多い。 私は、障がいのある人とない人が交わることで、互いに支え合い、影響し合いながら、ともに生きることがあたり前となる社会をつくっていきたい。く成長させ、将来一人暮らしをやっていけそうだという自信を持つことができたと感じている。家庭では機会がなかった掃除や洗濯だけでなく、ほぼ初めて食事づくりを経験した。「自分はできないかも」と最初は自信がなさそうだったが、寮スタッフのサポートを受けながら、生姜焼き・ハンバーグ・唐揚げなどメインに加え、サラダとお味噌汁もあり、栄養バランスもきちんと考えられたメニューをつくれるまでになっていた。完成後の写真を送ってもらうこともあったが、盛りつけもとても美味しそうに仕上がっていた。なによりできない、苦手だと思っていた料理だったが、実際にやってみたらできたという経験になった。これは、じつは家庭ではなかなかできない。親として反省しなければならないが、本人に「料理をつくりたい」というモチベーションがあったとしても、つい手と口を出してしまう親の姿が目に浮かぶ。それでは本人が自信を持てるような貴重な経験にならないのだ。 障がいのある子どもたちの自立に向けたスタートは、いつからでも遅いことはない。大切なのは、「できないのだからやってもらってあたり前」という環境ではなく、家族や周囲でかかわる大人は本人がきるような自立へのサポートをすることだと、いまは考えている。息子へのサポートが180度といってよいくらい変化した。 障がいがあるということで、親は周りに迷惑をかけてしまうのではないかと考え、子ども同士の交わりや地域社会との交わりも積極的に持つことがむずかしいと感じることがある。 親としてできることは、何でもやってあげるサポートではなく、大切なことは子どもが一人でできるためのサポート。 今回取材させていただいた二校ともに寄宿舎での生活、ステップアップとして一人暮らしの経験も高校の3年間で体験する。これまでの私であれば、将来高校生になった息子を家とは別の寄宿舎に入れるなど想像もできなかったが、施設を見学させていただき、子どもたちの可能性を拡げるうえで、非常に重要な取組みであると確信した。 東京では、自立に向けた取組みとして、通勤寮やグループホームなどがある。 私が一緒に働くメンバーが昨年、通勤寮での生活にチャレンジした。本人が将来一人暮らしをしたいと考えるなかで、通勤寮での生活はメンバーを大き守る支援ではなく、自立に向けた支援ともに支え合い、ともに生きる社会へ岩沼高等学園で進路指導にあたる庄司竹弥先生働く広場 2022.42段ベッドが2台設置された舎室ワンルームタイプの部屋が5室設けられた「生活訓練棟」室内にはユニットバスやキッチンなどが備わっている岩沼高等学園寄宿舎の共用部宮城県立支援学校岩沼高等学園寄宿舎岩沼高等学園寄宿舎の洗面室25

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