働く広場2022年4月号
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働く広場 2022.4て、中間管理職などの一部の社員への負荷が増えていることなどの影響が表れていると考えられる。社内の一体感が薄れてきている状況もあるので、早急な対応が必要になる」との認識が示されました。 障がいのある社員の定着率に関しては、2020年度の定着率は97%であり、高い定着率が達成できた要因として、事業部と人事総務部に属する定着推進課(支援機関と連携して現場の指導などがうまくいくようサポートすることに特化した課)の連携対応が大きな役割を果たしたとの考察がありました。 自宅待機や在宅勤務の対応としては、課題を提供したり、不調を起こしやすい社員には電話連絡をしたりするなどして、障がいのある社員の心身の健康の維持に力を注ぎ、出勤を再開するときには、これまで以上にていねいな状況観察を行って、何か問題が発生しそうな場合は支援機関や医療機関と速やかに連携してサポートを行ったとのことです。原田氏からは「このようなコロナ期間の対応や、今までの長い取組みの積み重ねなどが複合的に折り重なった結果として、今回の定着率につながったかもしれない。今後も注視していきたい」との説明がありました。  同社では、Withコロナでの取組み指針として、「ベネッセグループの新しい働き方・仕事にしっかり対応し、業績回復への支援を行うこと」、「ベネッセビジネスメイトの経営の正常化と障がい者雇用拡大路線への復帰を実現すること」、「Withコロナの働き方、環境、支援して毎日Teamsを通じた朝会を実施したほか、日報を通じて体調などの些細な変化を共有したことも有効だったとのことです。結果として、開発のスピードは通常の3倍以上となりました。生産性の向上の要因には、通勤のストレスがなくなったことや集中できる環境が得られたこと、チャットなどのツールの利用により、コミュニケーションの負荷を感じなくなったことなどがあげられていました。一方で、生活リズムの乱れなどの新たな課題も出てきており、現在もリモートワークと出社を併用した勤務形態を継続してトライアル中とのことです。  次に、コロナによる急激な変化に対して社員の意識がどのように変化したかについて紹介がありました。同社の2020年度の職場の満足度調査結果によると、知的障がいのある社員については、「会社にくるのが楽しい」という回答率が前年度より増えている一方、ほかの社員の「働きがいを感じる」、「成長実感」、「仕事量は適当」などの回答率は低下したとのことです。これについては、原田氏より「障がいのない社員の回答も含まれており、コロナ禍によっ体制を整備し、安心して長く働き続けられる会社となること」の3つを掲げています。原田氏からは、そのために実現すべきテーマとして、個々の特性に応じた業務の切り出しとアレンジによる「障がいのある社員の戦力化のしくみ作り」、コロナによってできた新たなニーズに対応した「業務変化への対応、新規業務受託の拡大」、「Withコロナで安定的に働ける環境作り」の3点があげられました。 これらを実現するための取組みとして、カフェ運営などの新しい業務や既存の業務の変革のほか、障がいのある社員への業務指導にあたる支援者が成長を実感できるような育成指標(スキルマップ)の導入や、社員による新規業務提案制度など、社員のモチベーションを立て直すための取組みも強化しています。 講演の結びとして、原田氏からは「この2年弱のコロナ禍において多くの変化や課題が出てきた。まだ発展途上ではあるが、コロナと共存していくなかで障がい者雇用の価値というものを上げていきたい。また、障がいのある社員一人ひとりが自立して活躍し、やりがいを感じながら長く働き続けることができる会社、個人と企業がともに成長していく職場を目ざしていきたい。引き続き企業理念に基づいてチャレンジしていくことで持続的な成長を成し遂げたい」との展望が語られました。●       ●       ● 次号では、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」のパネルディスカッションⅠ「メンタルヘルス不調による休職者への対応~職場復帰支援を考える~」、パネルディスカッションⅡ「職務創出とその支援~障害者雇用をしていくために~」をダイジェストでお伝えします。コロナ禍において、社員の意識や障がい者の定着状況はどう変化したかWithコロナの障がい者雇用のチャレンジ特別講演の講師株式会社ベネッセビジネスメイト人事総務部部長の原田昌尚氏◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp)29

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