働く広場2022年4月号
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働く広場 2022.4コロナ禍における障害者雇用の現状と課題〜企業に求められるこれからの障害者雇用とは〜障害者雇用ドットコム代表、東京情報大学非常勤講師 新型コロナウイルス感染症の影響により、私たちの働き方や仕事内容、生活スタイルは大きく変化しました。障害者雇用ではどのような変化があったのでしょうか。厚生労働省の「令和3年障害者雇用状況の集計結果」を見ると、雇用障害者数は59万7786・0人、実雇用率2・20%と雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新しています。一方で、「令和2年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」(厚生労働省)を見ると、ハローワークの障害者新規求職申込件数は21万1926件で、対前年度比5・1%減となり、平成11年度以来21年ぶりに減少しています。就職件数は8万9840件で、対前年度比12・9%減となり、平成20年度以来12年ぶりに減少しました。令和3年3月の法定雇用率引き上げなども関係し、雇用障害者数は増加しているものの、コロナ禍の影響を受け新規採用は厳しかったことがうかがえます。 障害者を雇用している企業における影響を見ると、業種、地域による差はあるものの、緊急事態宣言発令時には、休業、時差出勤、交代勤務などで、勤務時間を調整したというところが多くありました。特に知的障害や精神障害のある人を雇用している企業では、障害のある従業員の業務が、清掃や事務補助的な業務、印刷関連、メール配達など職場で行う仕事が多く、テレワークができないという状況があったためです。 また、サービス業などのテレワークがむずかしい業種や仕事では、ソーシャルディスタンスを保ちながら、通常通りの業務をしているところがありました。一方で、IT・情報関連の仕事が中心となっている業種や会社では、パソコン業務が中心だったこと、すでにセキュリティ体制が整備されていたこともあり、テレワークにスムーズに切り替えられたところもありました。 コロナ禍以降テレワークに切り替えた企業からは、好意的な反応が聞かれています。特に精神障害や発達障害のある従業員からは、「通勤ストレスがなくなった」、「対人コミュニケーションが減り、それによって働きやすくなった」という声があり、テレワークの継続を希望する声が多かったそうです。もちろん障害特性によっては、テレワークがむずかしかったり、個別の対応が求められる場面もあります。それでもテレワークという選択肢が広がることは、通勤が困難だったり、地域により働く場所がかぎられている障害者にとっては、働ける可能性を広げる機会につながります。また、企業にとっても障害特性に配慮した設備投資のコストが削減でき、首都圏など採用が厳しくなっている地域でも採用の可能性を広げることができます。 テレワークにかぎりませんが、「業務を検討コロナ禍が障害者雇用におよぼした影響テレワークから見る新たな働き方とは※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています松井優子2

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