働く広場2022年4月号
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働く広場 2022.4い社会課題を発見し、それを基に自社のビジネスの新たなヒントにつなげることがあります。また、社会課題を起点とした解決策を考えていくアプローチを実践することで、社員の社会課題意識のレベルアップを図り、結果的に本業に貢献しつつ、会社と社員両者が同じ方向性を目ざすことにつながるケースも見られます。障害者雇用も雇用率の達成だけでなく、組織全体で新たな意義や位置づけを再定義することにより、違った視点でとらえ直すことができるでしょう。 変化はチャンスにもなり得ます。いままで取り組んできた障害者雇用の考え方や仕事内容を見直すことにより、組織に貢献する障害者雇用に取り組む機会にすることができます。これからは障害者雇用率を達成するだけでなく、企業に貢献する一歩進んだ障害者雇用を目ざすことが求められています。 教育機関で知的障害、発達障害の教育、就労にたずさわる。送り出した学生たちが戻ってくるのを見て、障害者雇用には一緒に働く職場の理解が必要だと感じ、企業で障害者雇用にかかわる。特例子会社の立ち上げ、200社以上の企業のコンサルティングや研修にたずさわり、現在、障害者雇用ドットコム代表。企業視点からの障害者雇用の進め方や業務の切り出し、職域開拓などを得意とする。 著書に「障害者雇用を成功させるための5つのステップ」、「特例子会社の設立を考えたら必ず読む本」、「これからの障害者雇用はどうなるのか:コロナ禍の影響と今後に向けて企業が行なうべき事」(以上、Kindle)などがある。松井優子(まつい ゆうこ)しているが、障害のある従業員に適した業務が見つからない」という声をよく聞きます。このような問題がでてくる理由は、一つの部署やグループなど限定的な範囲で考えていたり、組織や業務の流れを把握していない受け入れ側の社員が、障害のある従業員の業務の検討を担当しているからです。現状でむずかしい場合には、特定の部署だけで考えるのではなく、組織全体で考えていくことが必要です。また、組織の事業全体を見通せる人材や事業運営で発言権のある人材がかかわることも求められるでしょう。 ある企業では、障害のある従業員がになう業務の切り出しに事業部の責任者がかかわり、障害のある従業員がどのような特性や能力を持っているのかを理解したうえで、社内全体の業務のなかからマッチングできる分野を見つけています。外注するよりもコストが安いなどの経済的なメリットを提示したり、納期面での柔軟な対応ができることなどを示すことで、事業部の社員たちは障害のある従業員に業務を任せることのメリットを認識しやすくなり、依頼業務が増えているそうです。これができたのは、事業部やプロフィット部門の社員たちの考えを理解し、ニーズとうまくマッチングさせたからです。 また、「障害のある人ができる仕事は何か」という視点からは、新たな業務を創出することはできません。組織に必要とされる業務、求められる仕事という視点から仕事を考えていくことが大切です。社内全体を俯ふ瞰かんしたときに、「人手がほしい業務はないか」、「やらなければならないけれど手がつけられていない業務はないか」、「いま、できていない業務でも、本当は取り組んだほうがよいものはないか」、このような点を見つけられるようになると、業務を見つけやすくなります。 企業の障害者雇用が語られるときに、最近よく聞かれるようになったのが、SDGs(持続可能な開発目標)とサステナビリティ(持続可能性)です。企業活動の継続という面からも重視されています。障害者雇用は、人材活用の面から女性や外国人などと同様にダイバーシティ(多様性)に対する取組みの一環としてとらえられがちですが、SDGsに含まれるほかの視点からとらえ直すことによって、それらの持つ意味を広げることもできるでしょう。 例えば、SDGsの取組みでは、企業が社会課題解決に取り組むことがあります。社会課題を知るためのきっかけとして社員がボランティアやプロボノ(知識やスキルを活かした社会貢献)などに取り組み、会社のなかでは気づかな組織に貢献する障害者雇用を実現するために3

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