働く広場2022年4月号
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働く広場 2022.42011年に障害者手帳を取得。その翌年に「障がいのある人たちと一緒に働きたい」と、入社したという。最初の配属先「パーク遺失物センター」では、知的障がい、精神障がいのある同僚たちと一緒に働いた。接し方に戸惑ったが「まずはその人を知ろう」と会話を重視。上司から「しゃべり過ぎだよ」とたしなめられたが、「あの時間は必要だったと思います」と笑顔でふり返る。「でも、だんだんプライベートな相談を受けるようになり、『どこまで聞くべきか』と悩みました。上司やNDGから助言をもらい、肩の荷が下りました」その後は、必要なときはキャストの業務を調整したり、支援機関などに相談するよううながしたりして、スムーズな支援につながる橋渡し的な役目をしている。いま配属されている通行証管理のロケーションでもキャストたちと一緒に、グループ会社従業員らに、ていねいな対応を心がけている。 舞浜コーポレーションは2019年、それまで嘱託社員としていたキャストを全員、正社員化した。2021年3月まで4年半にわたり代表取締役社長を務め、現在は同社理事とオリエンタルランド人事部マネジメントアソシエイトを務める中なか澤ざわ尊たか史ふみさんは、「契約を毎年更新しながら働いてくれているキャストに、安定して働き続けてほしいという思いから正社員化を決めました。それに向けて親会社を納得させるため、奔走しました」とふり返る。具体的には、それまでの6段階の社員資格制度を7段階に増やした形だ。小原さんによると「正社員化によって、新たにキャリアステップの道筋も示すことができたことも大きかった」という。キャストも、勤務年数や人事評価などの条件をクリアすれば、昇格試験を経て昇格できることになったからだ。現場では、業務内容に沿った「ステップアップシート」を作成している。人事部の畑はた本もと賢けん治じさんによると「作業スキルの習得状況などをわかりやすくステップで示し、自分がいまどの位置にいるかを現場の育成担当と確認し、半期ごとに目標設定しています」という。2021年度には、キャスト3人が昇格した。その一人が、2013年入社の大おお滝たき愛まな美みさん(32歳)。製菓学校卒業後に洋菓子店などで働いていたが、会社の研修中に体調を崩し、周囲のすすめで受診した精神科で初めて知的障がいの診断を受けた。就労支援機関を経て入社し、いまは加藤さんと同じ通行証を発行するロケーションに配属されている。昇格して大きく変わったのは、任される仕事が増えたことだ。「例えば通行証の再発行時の、お金の受け渡しも任せてもらえるようになりました。計算が苦手だったのですが、妹が簡単な暗算法をいくつか教えてくれました」と話す。作業チームの中心に立って仕事を回すこともあるが、効率よく平等に作業を割りふる方法を考案するなど努力を怠らない。昨年は、初めて地方アビリンピック(千葉県)で喫茶サービス種目に挑戦。「接客は仕事でも活かせるため、よい経験になりました。次回も挑戦したいです」と意気込む。岡部さんは、「会社では、これまでパソコンデータ入力などの種目に選手を送り出してきましたが、喫茶サービスは初めてです。職域拡大を視野に、今後もトレーニングを含め挑戦していきます」と語る。 キャスト全員の正社員化と同時期に労働組合の「舞浜コーポレーション・フレンドシップ・ソサエティ」も設立され、キャストの加入手続きがていねいに進められキャストを全員正社員に労働組合にも加入通行証の発行などを行う部署で働く大滝愛美さん大滝さんは、通行証に使用する顔写真の撮影も担当する地方アビリンピック(千葉県)で喫茶サービス種目に出場した大滝さん(左から2人め)(写真提供:株式会社舞浜コーポレーション)7

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