働く広場2022年5月号
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働く広場 2022.5ジア人の副工場長の紹介で2013年に入社した。社内で週1回開催している日本語教室で勉強しながら、職場の部下たちに仕事の指示や指導をしている。「牟田さんも吉㟢さんも、よくがんばっています。どこかでミスが出ても、チームで助け合うので大丈夫です」と話す。吉㟢さんは、「職場ではウェットさんたちから現地の挨拶やありがとうの言葉を教えてもらい、たまに使っています。ここは多国籍なので毎日楽しいですね。チームワークもよいんですよ」と語ってくれた。 ダイバーシティが浸透する職場で生産性を上げてきた背景には、社内勉強会も一役買っているようだ。以前から、「職場で学ぶ文化をつくって人材を育てたい」と考えていた伊藤さんは、社長就任時から週1回のペースで社内勉強会を始め、続けてきた。勉強会では、伊藤さん自身が影響を受けた本などを参考に、仕事への向き合い方やチームワークなどさまざまなテーマで話す。なかでも社員に伝えたいことの一つが「働きがい」だ。「彼らの仕事と、それが世の中の何に役立っているのかが結びつけば、働きがいややりがい、ひいては生きがいにつながります。溶接の仕事をしている人が、単に『自分の仕事は鈑金』と考えるのではなく、『自分が加工した部品がついたバスは、地域を走り、人々の生活になくてはならない存在。もっと社会の役に立てるよう技術を磨いていこう』と思えるかどうか。そういう姿勢を、社内だけでなく、ほかの職場や社会全体にも広げていきたいと思っています」と、伊藤さんはいう。社内勉強会は、毎週火曜日に役職者と事務職を対象に行っていたが、年1回提出してもらう「社長への手紙」で、「勉強会に出ている〇〇さんが伸びているので、自分も参加したい」という声が届き、水曜日の始業前に、全社員を対象とした自由参加での勉強会も始めた。ちなみに参加者には30回出たら3000円分のクオカードを進呈している。コロナ禍を機にオンラインになり、1回5分~8分ぐらいの伊藤さんの話を動画配信している。  伊藤さんは、自社だけでは養護学校在学生の実習の受け入れに限界があるため、もっと受け入れてくれる企業が増えてほしいと思っている。栄和産業では、神奈川県立藤沢養護学校の生徒たちが文化祭販売用につくったメモ帳を、これまでに1800冊以上購入し、個装する際に実習受け入れ企業を募集する紙を同封してもらって、取引先などで配っている。会社のカレンダーにも、各養護学校で制作しているものを、写真で紹介している。「障がい者雇用にふみ出せない企業には、まずは実際に働く様子を見てもらいたいですね。うちの工場見学も大歓迎ですよ」今後の目標は、障がいの有無に関係なく、ものづくりの現場を活かした教育の場をつくることだという。フリースクールも視野に入れて、社員と一緒に具体的な計画を練っているところだと伊藤さんは語ってくれた。「例えば不登校で、ものづくりに興味がある子に来てもらって、実習を体験してもらう。もしそこで自信をつけたら、新たな夢に向かって義務教育の場に戻るかもしれません。ものづくりの実習の場が、日本の未来の労働人口を増やす土壌にもなるのではないかと思っています」学ぶ文化と働きがい実習受け入れ企業を増やしたい出荷梱包担当の牟田誠太郎さん牟田さんと同僚の吉㟢昌弘さん主任のサッ・ウェットさん9

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