働く広場2022年5月号
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働く広場 2022.5検索jeed※ 当機構ホームページでご紹介しています。トップページ右上の「サイト内検索」をご利用ください事はどうしたらよいかなどの情報もなく、不安でいっぱいの気持ちでした」と加藤さんは話します。 そのような状況のなか、力になってくれたのが、職場の上司でした。 「何としてでも、加藤さんの職場復帰を支えたいという思いがありました。しかし、当法人では、これまでに視覚障害者を雇用した経験はなく、一体何をしたらよいのか、まったくわからない状態でした」と、管理部係長の廣ひろ崎さき悦えつ代よさんはふり返ります。 何か情報を得たいと出向いた中小企業向けの障害者雇用フェアで、障害者職業センター(※)のカウンセラーから、視覚障害者就労生涯学習支援センターを紹介されました。そして、視覚障害のある人のための職業訓練があることを知り、まずは加藤さんに受講してもらうことにしたそうです。 職業訓練で加藤さんは、視覚障害者用の画面読み上げソフトや画面拡大ソフトを使用し、マウスを使用せずにキーボードのみでパソコンを操作する、パソコンスキルを身につけました。これにより、加藤さんは、視覚障害があっても、健常者と同じような事務の仕事ができるようになりました。しかし一方で、職場では加藤さんにどのような業務を担当してもらったらよいのか、まったく見当がつかなかったそうです。廣崎さんは、「業務の切り出しのためにお世話になったのが、ジョブコーチ支援(※)です。施設長の呼びかけにより、各部署にある事務作業を介護や看護のスタッフに提案してもらい、ジョブコーチにアドバイスをもらいながら、ひとつひとつ精査して、加藤さんに担当してもらう業務の内容を整えていきました」といいます。 画面読み上げソフトや画面拡大ソフトなどの業務に必要な機材は、当機構の中央障害者雇用情報センター(※)の就労支援機器貸出制度(※)を利用して、一定期間試用したのちに購入しました。 「本人は、会社に経済的な負担をかけることを気にしていましたが、貸出制度や助成金(※)を利用して購入することで、経済的な負担は最小限に抑えられました」 視覚障害のある人の雇用において課題となる、安全な職場環境の確保については、特別養護老人ホームという施設の特性上、手すりなどがすでに設置されていたため、足元に物を置かない、動線上に配線ケーブルを引かないなどの配慮で対応できました。  現在、加藤さんは事務職として、各種データの集計や会議の議事録の作成などを担当しています。これらの業務は、もともと各現場の担当者が行っていましたが、加藤さんが担当することで、周囲の職員の負担が大きく減り、本来の業務に集中できる時間が増えたそうです。 「同僚から、『助かっている』と言葉をかけてもらえることに喜びを感じています。一方で、職場復帰から約6年が経ち、業務にも慣れているので、もっとさまざまな業務を行うことで、組織に貢献したいという思いもあります」と加藤さんはいいます。 廣崎さんは、「加藤さんの職場復帰の過程では、本人の努力やスタッフの協力はもちろん、支援機関など外部の力に助けられました。『もっといろいろな仕事をしたい』という加藤さんの思いに応えるためにも、ジョブコーチ支援などを再び活用する時期に差しかかっているのかもしれません」と語ってくれました。業務中の加藤健慈さん。就労支援機器を利用することで、入力業務などが可能になった加藤さん(左から2人め)は、施設内で開催されるすべての会議に出席して、議事録を作成している支援機関も活用職域の拡大に向けて11

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