働く広場2022年5月号
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ても「熱い想い」をお持ちの方で、それはご本人の行動からも伝わってきた。特例子会社に傾ける情熱の強さは、おそらく社員の心にも響いているのだと思う。アビリティワークスをもっとよくしたいという成田さんの想いは、アビリティワークスの概要を明快に示すパワーポイントとプレゼンテーションにも伝わってきた。 成田さんに続いて、シニアマネージャーの遠藤さんからもプレゼンをいただき、同僚による自然な支援としてのFC(フェローカウンセリング:専任担当)の取組みや、定期的な面接により合理的配慮事項を確認されていることなどをお話しいただいた(詳細は後述)。みなさんの熱意に負けそうになりながら、必死にメモを取っていた。 この後、精神障がいがありながら働く、たいへん優秀な従業員の方々のお仕事ぶりを4階のオフィスで見せていただいた。さらにその後、別室で3人の方々との個別面談、社長との面談を経てから、最後に5人のマネージャーを含む全体意見交換会の場を設けてくださり、たいへん濃密な取材となった。 4階の職場には、3つの休憩室(ベッド、ゆったり座って眠れるソファがある部屋)と5つの個室(自分一人で集中できる仕切られた個別作業スペース)があり、体障がい者にターゲットを向けた。 そして、本当は高い能力を持っているのにもかかわらず、「精神障がい」という枠組み故に就職や雇用継続がうまくいかない多数の人々を、新たな「人財」として雇用し、彼らの能力を「開発」することを目ざしてきた。彼らの高い能力を引き出し、さらに伸ばす。これを競争的な一流企業の業務に組み込む。こうして、仕事ができるようになり、職業によって「精神障がい者」から「能力のある本来の自分」へと回復する過程を継続的に支援していく。これこそが、職業リハビリテーションである。 アビリティワークスは、自身の能力を仕事で発揮できる場を、MS&ADグループの事業展開に活かすために、本社グループからの出向者7人を配置している。この7人に加え、障がい者雇用に詳しいマネージャー8人がおり(前述)、ヒューマンサービスのプロとして、同僚として職場定着を支えている。社長の菅谷さん、統括本部長の小島さん、事業部長の成田さんは、口を揃えて、この8人のマネージャーたちの力量を讃えている。なんとも風通しのよい職場だ。 社長の菅谷さんは、前取締役社長であった本もと島じまなおみさんの志を2020年の4月から引き継がれ、現在に至っている。4階の職場にある社長の机は、社員を見渡せる場所にはあると思ったのだが、パッと見てもどこに社長がいらっしゃるのか、教えていただくまでわからなかった。「溶け込んでいるなあ」と思いながら、菅谷社長にお話をうかがうと、「みなさんのそばで一緒に、気持ちよく、楽しくお仕事をさせていただいております」というお答えであった。芯のあるお考えが行動に現れているのだろう。実際にお話を始めると、「自然体で力まない方」という印象を受ける。カメラマンの官野さんが社長にカメラを向けたときには、「写真撮るなら、ちょっと整えてくるわ」と、同席していたマネージャーの女性の方々に優しい笑顔を向けながらドアに向かう。「いってらっしゃい」という感じで笑顔で見送る仲間。いい職場だ。 統括本部長の小島さんは、とても謙虚な方で「私には、障がいに関する知識が足りません。いつもマネージャーの方々に教えていただいております。みなさん、すごいです」と讃えておられた。ご自身は「知識がない」とおっしゃっていたが、そんなはずはなく、言葉の端々にキラリとした知性が輝く。静かな物腰、穏やかな口調で、アビリティワークスという組織について要点をまとめてお話をいただいた。 事業部長の成田さんは、今回の取材に快く応じてくださった方である。何といっアビリティワークスの人財職場の様子働く広場 2022.5MS&ADアビリティワークスのオフィス事業部長の成田克彦さん(左)、統括本部長の小島元一さん(右)(左から)マネージャーの郭侑美さん、佐々木紗里さん、シニアマネージャーの遠藤貴子さん成田さんによるプレゼンテーション意見交換会の様子22

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