働く広場2022年5月号
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事ツールをたいへんうまく使っている。 職業性ストレスはだれにでも起こり得ることだが、その対処法を「活用」レベルで実践している人は、実はそんなに多くないのではないか。もし職場で自分の考え方や行動を客観視し、俯瞰できるようになれば、落ち着いて仕事ができると思うし、それは自信につながる。「ああ、そうか、私はこうしたストレス状況下ではこんなふうに反応して行動しているのだ」という自己理解を高めていけば、「よし、次はもっとよい対処をしてみよう」といった正の行動修正につながる。私も「そんなふうに冷静に仕事をしなければなあ」と、インタビューをしながら、あらためて自身の働き方をふり返る機会をいただいたような気がする。 アビリティワークスのみなさんは、全員が個人の能力と行動を仕事としてプラスの方向に修正することを前提としていらっしゃるように感じた。これは、会社の理念である「能力を仕事で発揮する」ことを実現するためには、前提条件となっているのもしれない。いま一度、「アビリティワークス」の意味を英語で吟味するなら、おそらく「障害ではなく能力を見よ」ということになるのだと思う。いい換えれば、「障がいという考え方では機能しない。能力が障がいを超える」ということだ。〝Disability does not work, but ability works.〞トリスト活用と週1回の面談でアドバイスいただけることで、少しずつできることが増えてきました」と素敵な笑顔を向けてくださった。ご自身が活用されている「ヒヤリハットリスト」は、常にアップデートされ、ご自身の能力を発揮するために活用されている様子がうかがえる。「仕事以外のご趣味は何ですか?」とたずねると、「いま、ダンス教室に通っていて、1人カラオケも好きです。ギターも始めました」とのお答えで、オフワークも充実しているご様子であった。これは仕事を続けていくためにも、人生を楽しむためにもとても大切なことであり、私は大きく頷きながらインタビューを終えることができた。 アビリティワークスでは、職場定着のためにさまざまな工夫をされている。誌面の都合上すべてご紹介できないが、例えば、「仕事のための私ノート」といった自身と向き合うためのツールがあり、それらを個人の特性に応じて適宜有効活用されている。こうしたツールは、例えば、自分がどのような状況で自身の行動に気をつけるべきかを日々整理し、自身にフィードバックさせ、行動修正につなげていく認知行動療法のテクニックであると思うが、社員のみなさんはこうした仕いた。小針さんは、自分の言葉を選び、ていねいにしっかりと話すことのできる優秀な方である。「通勤に片道2時間かかるのでたいへんですが、やりがいのある職場です」と話す。アビリティワークスでの仕事のやりがいについては、自分の「努力が実り、できる仕事の幅が広がることが喜びです」ととらえていた。そして、それは自分の「障がい特性を理解したうえで指導していただいているおかげです」と感謝の気持ちを忘れない。ご自身の特性については、「これまでのアルバイト経験では障がいを開示しておらず、特性上の苦手が怠けだと思われ常に心苦しかった」とし、障がいの開示によって得られる理解と安心感を語っておられた。反対に、職場でたいへんなことは、先に述べた「通勤」のほかに、「早寝早起きするための対策、生活リズムを保つこと、家事方法や土日の過ごし方について悩んでいます」とのことであった。業務的にたいへんなのは、「数的処理が特性上苦手なため、パソコンで膨大な件数を扱う情報処理に追われることがある」とおっしゃっていた。小針さんは、ご自身のこうした「特性」をしっかりと把握されていると感じたが、ご本人は、「うっかりミスや作業管理ミスが、仕事の未熟によるものなのか、それとも自身の特性によるものなのかわからず、落ち込むこともあります」という。でも、「ヒヤリハッおわりに働く広場 2022.5代理店のホームページ点検作業を行う小針さん反省点と原因、解決策などが記入されたヒヤリハットリスト事業部の小針奈々さん25

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