働く広場2022年5月号
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働く広場 2022.5︱︱障害者に特化した労働組合﹁ソーシャルハートフルユニオン﹂の設立の経緯と、活動内容について教えてください。 きっかけは、私の知人から、知的障害のある息子さんについて相談を受けたことでした。働いている会社でひどい扱いを受けているようでしたが、とても個人で解決できそうにない状況でした。そこで私たち有志が集まり、一般の労働者のように団体交渉ができる労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」をつくることにしました。東京都労働委員会から資格適合認定を受けたのは、ちょうど日本が国連の「障害者の権利に関する条約」を批准し、効力を発生した2014(平成26)年2月です。知人の息子さんについては、私たちユニオンが間に入って交渉し、不払い分の賃金などを払ってもらった後、本人の希望で転職しました。 ソーシャルハートフルユニオンは、職種や雇用形態にかかわらず、働いている障害者であればだれでも加入できます。入会金3000円、会費は1カ月あたり1000円です。会員は現在500人ほどで、全国各地にいます。相談がある場合は、事務局のメールアドレスあてに個別で申し込んでもらうほか、月1回の労働相談会でも予約制で対応しています。――これまで、どのような相談に対応されてきたのでしょうか。 パワーハラスメントや不当解雇をはじめ、障害者差別や合理的配慮にかかわるものが多いですね。私たちは相談を受けるとまず、本人の行動によって解決できないかを一緒に考え、労働関係の法律の情報などを提供したりアドバイスをしたりします。職場での問題は、方向性を間違えると、かえって本人を取り巻く労働環境を悪化させかねません。必要に応じて、双方からていねいに話を聞きながら、慎重に解決策を見出していきます。 最近多いのは、コロナ禍での働き方をめぐる相談です。ある大手企業では、一般社員のテレワークや在宅勤務を進めているのに、障害のある社員については認めていませんでした。たまたま別の地方支社に勤める2人から相談を受け、私は本社の担当者に「本人の﹃安定して働き続けるために在宅勤務にしてほしい﹄という要望を、正当な理由なく認めない場合、何かあったら労災になりますよ」と伝えました。労働災害の予見可能なものを回避しないのは、雇用する企業側の義務違反にあたるからです。 私たちユニオンが交渉するときは法律的な面から詰めていきますが、いざ担当者とひざを突働く障害者と、雇用側に求められるものソーシャルハートフルユニオン 書記長久保修一さんくぼ しゅういち 1965(昭和40)年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科中退。会社経営などを経て2014(平成26)年、障害者のための労働組合「ソーシャルハートフルユニオン」を立ち上げ書記長に就任。NHKの福祉情報番組「ハートネットTV」の「障害者雇用」出演のほか、NHK福祉情報サイト「ハートネット」で「久保修一の『障害者雇用』スパルタ塾」を掲載中。おもな著書に『職場にいるメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』(日本法令)など。障害者に特化した労働組合ボタンのかけ違いで負の連鎖も2

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