働く広場2022年6月号
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働く広場 2022.6二事業推進部長の加か賀が康やす彦ひこさんに、職場で心がけていることを聞いた。「先日も、ある社員から『障害者の働く現場でどんなことに気をつけたらいいか』と聞かれましたが、決まった基準はありませんよね。やはり一人ひとりに合わせた対応に尽きると思います。あとは職場内で、だれからも不公平だととられないようにすることですね」としたうえで、こう語った。「社員たちには、『お金をもらって働いているのだ』ということも自覚してもらうようにしています。それまで家庭や学校にしっかり守られてきた社員も少なくなく、社会人として自立していく姿勢も育てていきたいですね」 DTSパレットでは2018年、テレワークによる「在宅勤務制度」をスタートさせた。当時、下肢障害のある社員らが中心となって提案し、9カ月間の試行期間を経て、セキュリティの課題などもクリアし実現させたそうだ。現在5人の社員が在宅勤務を主とした働き方をしている。その一人が2020年に入社した、聴覚障害のある三み谷たに清さや花かさん(28歳)だ。筑波技術大学でデザインを学び、別企業の特例子会社でウェブ広告のデザインなどを手がけていた。多くのことを学び成長できたそうだが、大きな職場で心身の疲れがたまり退職。1年ほど休養後、ハローワークで求人票を見つけ「在宅勤務可という条件を見て、働きやすいと感じ応募しました」という。最初の3カ月間は職場の雰囲気などを知るために出社もして、自分の具体的な障害について理解してもらおうと、積極的に交流するようにしたそうだ。日ごろのコミュニケーションは、三谷さんがある程度発声できるほか、複雑な内容はスマートフォンの音声変換アプリやデジタルメモを活用してやり取りするなど、ほかの社員の理解のもと、努力している。三谷さんは第一事業推進部イノベーション課で、DTSから依頼される印刷物などのデザインを担当している。前職での豊富な経験を買われ、いまはパソコンソフトのイラストレーターやフォトショップの操作スキルなども教える立場だ。テレワークが基本のため、チャット機能を駆使しながら業務を進めている。「チャット機能を使うほうが、正確に早く伝え合えますね。デザインの仕事も人に教えることも好きなので、いまの職場は、とてもやりがいを感じています」ちなみに三谷さんは中学から大学までバレーボールを続け、過去には社会人チームで全国大会に出場し、ビーチバレーボールでは日本代表候補として活動した経験もあるそうだ。 東京都で最初の緊急事態宣言が出された2020年4月以降、DTSパレットの社員も多くが一時自宅待機となった。仕事への不安や体調の悪化などを訴える社員の声を聞いた新出さんたちは、すぐに電話相談窓口の設置を決めた。5月に企画を立ち上げ7月からスタート。名称は、mマインドind rリラクシングelaxing rルームoom(心をリラックスさせる部屋、の意)の頭文字を取って「みれろ」とした。相談時間は平日9時半~17時、1回40分で何回でも利用できる。窓口は新出さんが務めている。また社員には、体調や不安事項などを記入する健康調査アンケートを週1回実施し、メールで新出さんあてに送ってもらっている。なかにはメールを送ったことのない社員もいたため、一人ずつ教えテレワークで力を発揮電話相談窓口「みれろ」画面共有機能やチャットなどを活用し業務を行う三谷さん第二事業推進部長の加賀康彦さん第一事業推進部イノベーション課で働く三谷清花さん8

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