働く広場2022年6月号
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働く広場 2022.6たが、思わぬ効果ももたらした。例えばある社員に「せっかくだからビジネス文体でメールを送ってみよう。自分でネット検索して作成してみて」とうながしたところ、驚くほど整った文章を送ってくるようになった。オンライン会議のやり方も学び、今春の年度末会議には初めて全員がオンラインで参加し、議決を採ったそうだ。健康調査アンケートの提出が習慣化するなかで、各自の気持ちの波を把握しやすくなってきたという。新出さんは「社員によって長文を書いてきたり、『何もない』と書くのがSOSの意味だったり、突然送ってこなくなると鬱うつ状態だったりさまざまです。電話でもフォローしやすくなりました」と話す。「みれろ」の電話相談は月30件ほどにのぼるという。 DTSパレットでは、DTSなどから業務を請け負う際、通常の取引と同じように営業活動をしてきた。相手がグループ会社でも、ほかの業者から見積もりを取って比較されながら値段交渉し、初めて請け負う業務の場合は“お試し用”としてさらに低めの価格も提示している。肝心の業務の中身は、予想を上回る成果を上げてきた。例えばパンフレットなどの印刷は、通常なら印刷の汚れや乱れをチェックするぐらいだが、知的障害のある社員が誤字脱字まで見つけだした。また、DTSから年賀状の宛名印刷を依頼されたときは、社員自らリストの住所や代表者の変更などを調べあげていたという。「彼らが自主的に契約内容以上の仕事をすることで、先方からの信頼も得ることができました」と新出さん。一方で寺村さんはこう話す。「少しむずかしい業務に挑戦しながら、社員たちは急激にスキルアップしてきました。私たちも、彼らを育てていくという強い思いを持って取り組んでいます」寺村さんの積極的な姿勢は、社長だった齋藤さんをも動かした。「寺村部長に相談すると、果敢に『やりますよ』といってくれるので、ハードルの高い仕事も思い切って任せられるようになってきました」。また齋藤さんも、兼務していたDTSの総務部長として、積極的に業務の依頼を進めてきたという。DTSパレットは2年前から、DTSの年1回の統合報告書の編集担当として構成・レイアウト作業を行うほか、株主総会で流す動画制作も手がけている。最近では、DTSのコーポレートサイトを全面刷新するにあたり、その一部を担当して評価された。さらに、英語ができる社員がいたことから英語版の制作も全面的に請け負っている。一方で、これまで齋藤さんが気をつけてきたのは、仕事ができるからといって頼り過ぎないようにすることだそうだ。「業務によっては納期が厳しかったり、修正のくり返しが常だったりするので、知らぬ間にプレッシャーが大きくなり、無理をして体調を崩す社員が出るかもしれません。DTS総務部の社員たちも、つい通常の外部委託のように頼ってしまうので、私が合間を見てペースを配分するよう注意をうながしています」という齋藤さんは、最後にこう語ってくれた。「DTSパレットの社員たちは、驚くほどの高いスキルを持っていたり、以前は一般企業で活躍していたりした人もいて、一人ひとりの能力をいかんなく発揮させている職場だと強く感じています。今後も、パレットという社名にふさわしく、いろいろなカラーを持った個性を活かし合いながら、社員が活き活きと働けるような職場を目ざしていくつもりです」より高度な業務を請け負う業務用印刷機が並ぶDTSパレットの印刷室9

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