働く広場2022年6月号
13/36

働く広場 2022.6います」と、分科会リーダーで人事部の伏ふし見みさんは話します。 活動を始めるにあたって取り組んだのが、障害のある社員全員に対するアンケート調査の実施です。その結果からわかった聴覚障害のある社員の困りごとや意見をもとに、施設改善などに取り組みはじめたのが、マザー工場である播磨事業所でした。「当社で働く障害のある社員のうち、もっとも人数が多いのが聴覚障害のある社員で、そのほとんどが、生産拠点のある播磨事業所に勤務しています。そのため、播磨事業所では、聴覚障害のある社員に対する取組みを中心に行ってきました。例えば、『見通しの悪い階段を昇ったり降りたりする際に、足音で人が来ることに気がつかずに、ぶつかりそうになることが多い』という声をふまえ、職場を巡視し、危ない場所にはミラーを設置するなどの改善策を講じています」と、分科会のメンバーで、総務部の香こう山やまさんは説明します。 また、「アンケートで、特に印象的だったキーワードが『孤立感』です」と、分科会のメンバーで、品質保証部の成なり田たさんは話します。「以前は、朝礼や社内セミナーなどの際に、聴覚障害のある社員は、話の流れについていくのがむずかしいように見えましたが、当事者も周囲の社員も『仕方がない』と、あきらめていたと思います。そのような状況を改善するために、分科会では環境整備に取り組みました。例えば、『UDトーク』や『Microsoft Teams』の文字起こし機能などのリアルタイムで音声を文字に変換する機器や、手話通訳を利用できるようにしました。また、筆談用の電子メモパッドを聴覚障害のある社員に配布し、受付や食堂などの共有スペースにも設置するなど、筆談で会話をしやすいように環境を整えました」 同時に力を入れたのが、啓発活動です。播磨事業所には約1000人もの従業員が勤務しているため、ダイバーシティの取組みを推進させるためには、社内の理解をうながすことが必須だと考えたそうです。「ダイバーシティプロジェクトでは、1カ月に一度のペースで社員向けのメールマガジン『ダイバーシティPJマガジン』を配信しています。そこに聴覚障害のある社員によるコラムを掲載するなど、当事者からの情報を発信しています。ふだんの業務でパソコンを使用していない社員も多いので、播磨事業所ではコラムをプリントアウトしたものを掲示板に貼って目につきやすいようにするなど、工夫しています」と、分科会のメンバーで、営業部の阪さかさんは話します。 ほかにも、社員食堂に手話の動画を投影したり、障害のある社員への理解を深めるための社内セミナーや手話勉強会を実施するなど、一般の社員が、障害者雇用や障害のある社員のことを自然に理解できるような取組みを続けています。 分科会の結成から5年目を迎え、社内における障害者雇用の認知度も少しずつ上がっており、障害のある社員に対する理解につながってきているそうです。 成田さんは、「まだまだわからないことや、とりかかれていないことばかりですが、当事者の視点に立って、いままで見過ごされていたような細かな点に目を向けることを大切にしたいと思っています。また、現在は、播磨事業所における聴覚障害のある社員に対しての活動が中心となっていますが、今後は、そのほかの障害のある社員に対する取組みも強化し、全社的に標準化した展開を目ざしていきたいと思っています」といいます。 伏見さんは、「障害者雇用や障害のある社員に対する理解は、一朝一夕に広められることではありませんが、一人でも多くの理解者、協力者を得られるように、地道な活動を続けていきたいと思います」と語ってくれました。 播磨事業所での聴覚障害者を取り巻く環境は良くなってきたと思います。最近AED講習会がありましたが、聴覚障害者だけの会を企画していただき、手話通訳者を通じて、ざっくばらんに質問ができ安心感がありました。他の事業所や会社全体にも、もっと理解が広まってくれればよいと思っています。    (製造部 中なか村むらさん)聴覚障害のある社員のコメント聴覚障害のある社員が書いたコラムが掲載されている「ダイバーシティPJマガジン」を、だれでも読めるよう掲示板に掲示している聴覚障害のある社員からの声をふまえ、通路にミラーを設置し、ヒヤリ・ハットを解消した出退勤カードリーダー。音だけではなく光により、カードが読み取れているかを確認できる聴覚障害のある社員に配布した筆談用のメモパッド(写真提供:ウシオ電機株式会社)社内の理解向上が取組みのカギに地道で継続した活動が必要今号14ページで就労支援機器をご紹介しています。ぜひご覧ください!11

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る