働く広場2022年6月号
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の木クリニック医師の田た川がわ精せい二じさんら、9人の開業医で立ち上げた。その数年前から、働きたいという患者の相談にこたえたいという思いがあったが、地域を見渡してみても就労支援の受け皿はなかったという。ではどうすればできるのかと勉強会を開いていたところ、2006年に障害者自立支援法が施行され、身体障害、知的障害、精神障害者の一般就労への移行を目的にする国の支援制度が始まり、精神障害者に特化した就労支援事業所を目ざすこととなった。 2007年5月、門かど真ま市に同ネットワークを開設、次いで茨いばら木き市、新大阪(大阪市淀川区)と続き、東京都も加え、現在、就労移行支援5事業所(定員100人)と、就労継続支援A型1事業所(定員20人)を運営する。精神障害に特化していた支援対象に、発達障害を加えた。支援方法は実践を通して充実を図っている。15年間の実績をまとめたパンフレットを見ると、「就職者600名以上」の見出しで「利用者の90%が就職。職場での定着支援に力を入れ専属のジョブコーチを配置、70%の人が同じ職場で働き続けています」とある。 2021(令和3)年の厚生労働省の「障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業における雇用障害者数は、住民として心豊かに過ごしているようです。ただ、私たちの事業所は一般就労への通過型として位置づけています。ここで終わりではなく、もう一つステップアップできるよう支援する。それが本来の役割です」と説明する。 一般就労に備え、必要な体力づくりをするため、勤務時間は1日5〜8時間だが、多くを6時間を超えるように設定している。事業内容が多岐にわたるので、幅広く体験できるのもメリットだ。 同事業所勤務から一般就労へのステップアップは、3年間の勤務を経験することを一つの目処にしているが、早ければ1年でも就職活動を始める。「会社で働きたい」という本人の意思、意欲が基本。 そして同事業所では、毎年2〜3人が一般就労する。就労支援員は、希望者とハローワークへ行き、求人票を見て企業訪問や実習を支援し、一般就労へとつなげている。就職後のサポートとしては、ジョブコーチの企業訪問、定着支援を必要に応じて実施している。 2007年、NPO法人として大阪精神障害者就労支援ネットワークは発足した。大阪精神科診療所協会理事で、くすりが好きなので、この仕事は楽しく、満足しています」と笑顔で話す。尾お関ぜき啓けい太たさん(38歳)は、高槻市から電車で通勤している。朝8時から8時間勤務。ウォーターサーバーを分解し、水あかや汚れなどを洗剤で手洗いする。洗い場での立ち仕事のため、暑い夏や寒い冬はこたえるそうだ。統合失調症だが、約8年間休んでいない。不調の波はなく、安定。パソコンで事務もこなす。休みの日は音楽教室に通ってピアノを習い、ソナタを弾く。パソコンで作曲もするという。「生活は安定し趣味のピアノも弾けるし、毎日充実しています」。 所長の柿かき原はら晋しん裕すけさんは2人について、「仕事は任せて大丈夫、信頼しています。支援学校の生徒の実習受け入れも率先してやってくれています」という。「就労継続支援A型事業所は仕事をして給料を得て生活も安定し、趣味の話も聞かせてもらえる。日々の暮らしも地域精神・発達障害に特化した就労支援働く広場 2022.6サンドブラスターでのエッチング作業を行う松浦さんウォーターサーバーの分解洗浄作業を行う尾関さんハートギフト事業部で働く松浦慈英さんアクアクララ事業部で働く尾関啓太さんアクアクララ北大阪所長の柿原晋裕さん23

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