働く広場2022年6月号
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働く広場 2022.6障害者のテレワークの現状と今後の見通しについて障がい者総合研究所所長 2020(令和2)年1月に、国内で最初の新型コロナウイルス感染者が報告されて以降、コロナ禍は3年目を迎えています。終息の期待も寄せられるなか、変異株の出現、それにともなう第6波、第7波への警戒が間断なく呼びかけられるなど、いまだその脅威は続いているように見えます(2022年3月執筆時点)。この間、社会生活のありようも大きく様変わりしました。 コロナ禍以前の社会では「テレワーク(場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)」という用語は一般になじみのないものでしたが、「緊急事態宣言」の発出により、感染防止の観点で出社せずに業務を続ける手段の一つとして、あらためて注目を集めるようになりました。 期せずしてテレワーク導入について全国的な検討を余儀なくされたわけですが、結果的にこれまでの社会通念・常識を大きく見直すきっかけになったと思われます。 すなわち、会社で働く必要性、出社(通勤)の必要性、また必ずしも1日8時間、週5日勤務を標準としなくてもよいのではないか、ということに社会が気づくきっかけになったということです。コロナ禍は間違いなく日本社会に大きな変化をもたらしました。 そこで障がい者総合研究所(※1)では、「コロナ禍とテレワーク」に着目し、この2年を通じて障害者が働く職場でテレワークがどれだけ普及しているか、その実態を知るべく調査を実施しました。 「コロナ禍とテレワーク」をテーマにした最初の調査は「勤務先における新型コロナウイルス(COVIDー19)の対策に関する緊急アンケート調査(2020年2月28日〜2020年3月5日)」(※2)でした。 この時期は感染の広がりとともに、使い捨てマスクやアルコール消毒液が全国各地で品薄となり、全国の小中学校や高校に臨時休校要請が公表されるなど、先行き不透明な時期でした。 「勤務先で実施されている対策は?」との問いに対し、「在宅勤務の実施」と答えた方は全体の約21%とテレワーク導入率は低く、どちらかというと時差出勤や消毒薬の常設など、出社を前提とした感染防止対策が主流だったことがうかがえます。 それからしばらくして、2回目の緊急アンケート「外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート調査(2020年5月15日〜2020年5月21日)」(※3)を実施しました。このとき日本は緊急事態宣言下にあり、現金10万円を支給する「特別定額給付金」の申請受付や、全世帯に布マスクを配る施策が開始されるなど、日々の生活を保障するための施策が打たれている時期でした。 「あなたの勤務スタイルに生じた変化を教えてください。」との問いに「在宅勤務(約40%)」、次いで「自宅待機(約23%)」と回答者全体の63%の職場で「出勤を回避する」ことに目を向けるよう変化したことがうかがえます。 最初のアンケート調査からおよそ1年後、アンケートから見る障害者のテレワークの普及度合い戸田重央※1 障がい者総合研究所:障害者の就労支援を中心にソーシャルビジネスを展開する株式会社ゼネラルパートナーズが運営する調査・研究機関。障害当事者や障害者を雇用する事業者へのアンケートを通じ、障害者の社会参加における課題や要望などを可視化し、広く社会へ発信している2

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