働く広場2022年6月号
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働く広場 2022.6どを心配される難病・内部障害のある方には「在宅勤務・テレワーク」の要望があり、そうした方々にとってテレワークという選択肢が増えたことは福音といえるでしょう。 一方で聴覚障害のある方からは在宅勤務やテレワークの導入により対面のコミュニケーションが取れなくなり業務に支障が出ていることや、規則正しい生活を送ることで心身の安定を図っていた方にとっては、急な労働環境の変化(出勤していた日常から自宅待機を命じられるなど)により生活リズムが変わり体調を崩してしまったなどの声も聞かれました。 テレワークの功罪はこれからも論じられていくと思いますが、いずれにせよ働き方の選択肢となったことは画期的だと思います。 テレワークはウィズコロナの観点のみならず、「働き方改革」の一環として、または「SDGs」などといった文脈で、好むと好まざるとにかかわらずこれからも普及が進んでいくことは間違いないでしょう。 障がい者総合研究所所長。 2015(平成27)年に聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと(現atGPジョブトレ大手町聴覚障害コース)」を開所、初代施設長に。2018年より「障がい者総合研究所」所長に就任。新しい障害者雇用・就労のあり方について実践的な研究や情報発信に努めている。その知見が認められ、国会の参考人招致、新聞へのコメント、最近ではNHKでオリパラ調査に関する取材を受ける。聴覚障害関連で雑誌への寄稿、講演会への登壇も多数。戸田重央(とだ しげお)「2度に亘る緊急事態宣言、障害者の仕事への影響度に関するアンケート調査(2021年1月19日〜2021年1月22日)」(※4)を実施しました。この時期は第3波が確認され11都府県で2回目の緊急事態宣言が発出されました(3月下旬まで続きました)。日常を取り戻す施策として、GoToEatやGoToトラベルといったキャンペーンが打たれては停止、延期になるなど混迷をきわめる時期でした。 「2回目の緊急事態宣言が発出されました。あなたの職場ではテレワークやローテーション勤務は導入されますか?」との問いに、「はい」と回答した方が「前回宣言時から続いている」も含めて、全体の約57%となりました。 3回のアンケートをふり返ると、1回目の調査時(2020年2月)に約21%であったテレワーク実施率(導入率)が、3回目の調査(2021年1月)では約57%になるなど着実にテレワークが普及している様子がうかがえます。一方で2回目の調査時にテレワーク(自宅待機含む)の実施率が約63%とあり、普及が高止まりしている、ということもいえそうです。 こうしたテレワーク普及の動きは、私たち株式会社ゼネラルパートナーズが運営する「就労移行支援事業所(障害のある方の一般企業への就職をサポートする通所型の福祉サービス)」の就職実績でもうかがい知ることができます。 2020年4月から2021年12月までの20カ月で202件の就職実績がありましたが、そのうち約27%(54件)が「在宅勤務OK」という雇用条件でした。 さらに、WEBデザイン、システムエンジニアとしてのスキルを学ぶためのIT・WEBコースの就労移行支援事業所だけに絞ってみると、「在宅勤務OK」という雇用条件で就職された方はおおよそ40%にのぼります。 2020年以前の就職決定実績のうち、在宅勤務可能な求人で就職できた数が0であったことを鑑みると、在宅勤務の求人は着実に普及の方向に向かっていると実感します。 コロナ禍も3年目を迎えようとするなかで、コロナ前の日常を取り戻そうとする動きも見られますが、当面はコロナのない日常(アフターコロナ)を模索するというよりも、コロナ禍の日常(ウィズコロナ)をどう過ごすかという考え方で日常を構築していくことになるでしょう。 今回アンケート調査を実施してみて、障害者にとってテレワークに功罪があることが見えてきました。通勤や移動に困っていた肢体不自由の方にしてみれば「時差出勤」の要望が、そして既往症により免疫力が低いことな障害者のテレワークは今後広がっていくのか?※2「勤務先における新型コロナウイルス(COVID-19)の対策に関する緊急アンケート調査」https://note.com/gp__info/n/n8298da357d3d?magazine_key=ma10bdc0e3f80※3 「外出自粛要請下における、就労状況の変化に関するアンケート調査」 https://note.com/gp__info/n/n4c56c973bef7?magazine_key=ma10bdc0e3f80※4 「2度に亘る緊急事態宣言、障害者の仕事への影響度に関するアンケート調査」https://note.com/gp__info/n/ndb2bda6827a1?magazine_key=ma10bdc0e3f803

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