働く広場2022年6月号
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働く広場 2022.6消去、ウェブページの制作・管理などまで手広く行っている。部長の寺てら村むら明あきらさんは、DTSパレット設立時に一般企業から転職してきた。「最初のころは、障害のある人にはハンディがあるというふうにとらえ戸惑いもありましたが、しばらくして、その認識が間違いだと気づきました」という。知的障害のある社員の一人は、もともと社内メール便の配達業務を担当していたが、あるとき「パソコンを使った仕事もしてみたい」と本人からの申し出があった。むずかしいだろうと思いながらもお願いしてみたところ、すぐに問題なくできるようになった。いまはサブリーダー的な立場として、庶務的な業務も任せているという。「いろいろな業務にトライしていくと、能力の幅が飛躍的に広がると実感しました。いまでは本人の苦手な部分ではなく、できる部分にフォーカスしていきながら、一人ひとりの能力開発を重視するようにしています」寺村さん自身も内部障害があり、歩行時はステッキを使っているが、職場環境については「あえて配慮しすぎないようにしている」という。例えば精神障害のある社員向けには、一人になれる空間を用意する場所が取れないこともあり、自分なりに調整するよううながしている。「私たち障害のある社員は、健常者からの配慮を当然と考えず、自分から近づいていく努力も必要です」と話す寺村さんには、社員がどこに行っても活躍していけるように、という思いもある。「それぞれ自己対処できるスキルや社会性を高めて、いつか『障害者雇用』という言葉もなくなる社会にしたいというのが私の持論です」2015年にDTSから出向してきた管理部管理課の新しん出で真ま由ゆ美みさんによると、職場内では、何か困ったことがあるときや助けてほしいときは、自分から具体的に申し出ることになっているそうだ。「私たちが配慮を察するのを本人が期待するほうが、かえって気づまりするのではないかと思います。寺村さんからも『荷物を持ってほしい』といわれなければ、だれも手伝いません」と冗談交じりに説明する。ちなみに新出さんは、DTSパレットに来てすぐに、障害のある社員からすすめられて障害者職業生活相談員の資格認定講習を受けたそうだ。「何も知らなかった者にとって、非常に勉強になった」と、その後は自らほかの社員に呼びかけ講習に参加してもらい、12人が相談員の資格を持つ。うち8人が障害のある社員だ。 一方で寺村さんや新出さんたちは、職場での社員の様子を見ながらヒアリングを行い、気持ちを打ち明けてもらうようにしてきた。そして、そのやり方は臨機応変に変えてきたという。例えば、以前は、急に休んだ翌日などは必ずヒアリングを行っていたが、「理由を聞かれたくないこともある」との意見が出たことから、いまは必要に応じて実施。新出さんは、女性社員が生理などで休んだときにはさりげなく業務を調整するなど、細やかな対応にも気を配っている。また、社員が互いを理解しやすい環境づくりにも努めている。まずは寺村さんが意識的に話しかけるが、雑談のなかで「あの人はこんな趣味がある」などとちょっとした情報を伝え、社員同士の会話がつながりやすくなるよう種をまいておくのだという。実際、それを機に職場内の会話が活性化しているそうだ。職場内での会話を大事に障害のある社員と面談を行う寺村さん山本さんは、パソコン管理業務などを担当する第一事業推進部長の寺村明さん管理部管理課の新出真由美さん第一事業推進部イノベーション課の山本拓海さん6

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