働く広場2022年7月号
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中田さんや若狭さんと同じ東京支店人事部第4グループの島し田だ真ま由ゆ美みさんに、日ごろから障害のある従業員と一緒に働くなかで、心がけていることを聞いた。「障害にも、目に見えるものと、そうでないものがあるので、日ごろから会話を絶やさず、できること・できないことを遠慮なくいってもらえる雰囲気づくりが大事だと思っています」障害のある同僚がいることで、業務について「本当に必要かどうか」の見直しも進んだそうだ。わずらわしい手作業を減らし、文書のデータ化をはじめ業務確認もチャット機能やメールで文字化することで、業務の流れが整理された。「コロナ禍では、私たちのグループがもっともスムーズに在宅勤務を導入できました」と島田さん。田中さんも「オンライン会議の導入時は、聴覚障害のある同僚からライブキャプション(字幕表示)やトランスクリプション(文字起こし)などの機能を教えてもらうなど、とても助けてもらいました」としつつ、「私たちが今回感じた移動制限のストレスや、人とのつながりが希薄になったさびしさなどは、障害のある人たちが普段から感じているものかもしれないとの気づきもありました」とつけ加えた。これまで各部署での直接雇用が進んできたことの影響について、田中さんは「職場内に障害のある人が増え、存在が珍しくなくなったことが、双方にとってよい環境になっているようです」とふり返る。障害のある従業員からは「特異な目で見られなくなった」、「不便だと思っていても『自分だけなら』といい出しにくかったことが、同じ障害のある人のためならと声をあげられるようになった」という話も聞いたそうだ。「いってもいいんだ、という雰囲気づくりが、職場の心理的安全性にもつながっていると実感しています」一方で障害については、オープンにして配慮を希望する人もいれば、「業務に制限をつけられる」、「キャリアステップに必要な経験が積めないのでは」と不安をもらし、希望しない人もいるという。田中さんは、「本人の意向に沿いながら、会社としてどこまで配慮できるか。ナチュラルサポートへの移行も視野に入れながら、これからも試行錯誤していきます」と話してくれた。一方で一般従業員からは「一緒に働くようになってから、街中で見かける障害のある人にも目が向くようになった」という声を聞く。最近も、土木部門で車いすユーザーの講演を聞く機会があった。「電車に乗るときに毎回介助してもらうが、一人でも乗れる仕組みがあるといい」と聞き、「建設会社として、何かできることがあるのではないか」と話し合ったという。ちなみに清水建設では2014年から音声ナビゲーションシステムの開発を始め、2018年にスマートフォンアプリ「インクルーシブナビ」として実用化した実績もある。田中さんが語る。「障害のある人の視点に立った、ちょっとした気づきが、私たちの本業であるモノづくりにも反映していけるのだと信じています。SDGsの理念にもあるように、これからも、『だれ一人取り残さない』との考え方を意識して、みんなで一緒に仕事に取り組んでいけるような職場にしていきたいですね」 業務の改善や工夫も進む モノづくりにも反映 ま9東京支店人事部第4グループの島田真由美さん設計本部デジタルデザインセンター長の上田淳さん国際建築パースコンテスト「AIP」授賞式の様子(写真提供:清水建設株式会社)

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