働く広場2022年7月号
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      似体験ができます。「安全教習所は、障害者雇用に本格的に取り組み始めた2011(平成23)年に、知的障害のある社員にもわかりやすい安全教育の必要性が高まったことをきっかけに設置されました。受講後に確認テストを実施するのですが、知的障害のある社員は、書面でテストを実施することが困難な場合もあり、○×の二択式で、口頭でテストを行ったり、×の場合には、なぜダメなのかの理由を答えさせるなど、具体的な理解を深められるように工夫しています」と長根さんは教えてくれました。日々の業務にあたっては、知的障害のある社員一人に対し、世話役の社員が必ず一人配置され、現場での安全、衛生、作業面の指導をマンツーマンで受け持っています。長根さんが話します。「世話役の社員には、障害者職業生活相談員(※)資格を取得してもらっています。面倒見のよい女性社員が多く担当しており、障害のある社員をみんなで支えていこうという雰囲気づくりの中心にもなってくれて助かっています。当社に勤務する知的障害のある社員は、業務に集中して取り組む真面目な性格の人が多いのですが、臨機応変な判断を苦手とする部分があり、体調不良を言葉でうまく伝えられないことなどもあるので、休憩時間には、医務室の看護師が様子を見に行くなど、一人ひとりの特性に応じたフォローを行っています」ハチカンの工場では、月に1回、社員による安全パトロールが実施され、事故の可能性が高い箇所などを確認しています。「危険箇所がどこなのかが、ひと目でわかるようなハザードマップを作成して、全社員の目につくところに掲示しています。幸い、ここ3年ほどは事故がありませんが、事故が発生した場合には、その検証や改善策の検討に本人も参加し、本人の障害特性などを考慮した再発防止策を講じています」と、長根さんが説明します。「文字情報を受け取ることがむずかしい人もいるので、危険な場所を表す標識などにピクトグラムを使用することも増えてきました。ピクトグラムは、外国人実習生にもわかりやすい目印となっており、直感的に一目でわかる表示を目ざすことで、社員の意識や理解度が深まり、事故防止や再発防止につながっていると感じています」知的障害のある社員の採用と定着にあたっては、外部支援機関の支援も積極的に活用しているそうです。「トライアル雇用期間にジョブコーチから、業務内容の理解促進やコミュニケーション方法などのサポートを受けることで、安心して受け入れることができています。また、近年は知的障害者を狙った犯罪などについて耳にすることが増えてきました。このような問題についても、支援機関と情報共有をしながら今後の指導を強化していくつもりです。そのほかには、知的障害のある社員が職場に加わることにより、職場の雰囲気が和やかになってきました」と、長根さんは感じているそうです。「障害のある社員も働きやすいようにしていこうという空気が、職場の雰囲気をよくしていると思います。2011年から知的障害のある社員を雇用していますが、別の目標を見つけて転職した一人を除き、全員がいまも当社で働き続けてくれています。経営者が障害者雇用に前向きであることと、それに理解を示す社員がいることが、このような結果につながっていると感じています」世話役がマンツーマンで指導だれにでもわかりやすい表示が事故防止に役立つ外部支援機関の活用と人材育成どのような状況や場所が事故につながりやすいのかが一目でわかるハザードマップ※ 当機構ホームページでご紹介しています。重い荷物を運ぶ重作業などを、体力のある知的障害のある社員がになっている世話役の社員が一対一で指導しながら作業にあたる。世話役(左)と知的障害のある社員(中央)(写真提供:株式会社ハチカン)安全教習所の模擬機械。実際に現場で働く前に、模擬的な実習を行うことができる検索障害者職業生活相談員11

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