働く広場2022年7月号
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らスタートし、上手な先輩の様子をまねながらスキル向上にもつなげてもらっています。というのも職場には、シフトに入っていない時間帯でも操作可能なオリヒメがあって、それを使っていつでも店内の様子を見ることができるんですよ。それから、カフェなどの職場には、休憩時間を過ごせるスタッフルームがありますよね。私たちのカフェでもVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)空間の「バーチャル控室」をつくっています。本人たちの分身が自由に出入りできる、いわゆるメタバースですね。パイロット同士がそこで雑談したりアドバイスし合ったりしているようです。――コロナ禍を機に、オリヒメを活用する職場そうでもありません。以前は、障害のある人だけが直接会議に参加できなかったことからオリヒメの利用価値が高かったのですが、いまはオンラインが普及し、オリヒメにこだわる必要もありませんから。でも選択肢が広がるのはよいことです。オリヒメは接客業務に向いているので、その方面で広がっていくといいなと考えています。またコロナ禍で一つよかったと感じたのは、これまで障害者をはじめ一部の人しか味わってこなかった「外出困難のつらさ」を、一般の人たちも現実に体験したことです。「オンラインで仕事すればいいじゃないか」というだけではなく、「みんなと同じように外出できないのはつらいよね」と理解してもらえたと思います。ただ今後コロナ禍が落ち着いて元通りの生活に戻ったら、そこで再び一部の人たちが取り残されてしまうのは、よりつらいことかもしれません。やっぱりみんな一緒に参加できるようにしたいのです。をしたときは、オリヒメでも参加できるようにしました。こういう機会や場をもっと広げていきたいと考えています。例えば美術館でも博物館でも、現地で気軽にオリヒメを借りて、遠くにいる人もオリヒメを操作しながら一緒に回れるようにしたいのです。外出困難な家族や友人と「昔ここに来たよね」なんて話しながら、リアルタイムに体験を共有できます。レンタルサイクルのように、全国各地にレンタルオリヒメの拠点をつくりたいですね。どうやって社会とつながり続けられるか。その手段である就労や娯楽を軸に、私たちは活動を広げていくつもりです。これを読まれているみなさんも、いつか何らかの障害のある人となり、外出困難や寝たきりになる可能性はありますよね。そうなったときも自分の意思で働き続けたり、だれかと楽しく過ごしたり、外の世界と自由につながる選択肢のある社会環境を、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。先日、私たちのカフェに集まってボードゲーム外出できなくなっても寝たきりになっても、大事なのは「居場所」と「関係性」社会とつながり続けるために――オリヒメなどの分身ロボットを開発してい私たちがいう「孤独」の定義は「自分がだれからも必要とされていないと感じ、つらさや苦しさにさいなまれる状況」です。孤独化の要因となる移動・対話・役割といった課題をテクノロジーで解決し、社会参加の実現を目ざしています。とくに働くことにおいては、本人が、その場にいる同僚や顧客との関係性をどうつくっていけるかを重視しています。「自分の居場所」として感じることができるか、「この人のために、このチームのためにがんばりたい」と思えるかどうかは、互いの関係性によると思っているからです。そこには単純に仕事上のつき合いだけでなく、雑談などを通して互いのバックボーンを知るといった積み重ねもあるでしょう。ですから私たちは、ある程度自由に話せる職場環境で、業務遂行の関係性に余地を残せるような働き方にしたいと考えています。さらにもう一つ、私自身もそうでしたが、孤         3環境のなか、自分がどこまで通用するのか自信独だったり居場所がどこにもなかったりというもない状況で、いきなり仕事の内容だけで評価されるようなところへ就職するのは、結構たいへんです。私たちのカフェでは、できるところかるオリィ研究所は、ミッションとして「孤独の解消」を掲げています。も増えたのでしょうか。

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