働く広場2022年7月号
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●体操選手から転身 己みさん(41歳)は、生後3カ月で左上半身い」という声に背中を押されたそうだ。コロナ禍では大規模なフォーラムを開催できなかったが、本社内の従業員を対象に経営トップとの懇談会が開催された。東京支店や本社に勤務する従業員のみなさんにも話を聞いた。東京支店人事部第4グループの中な田だ雅まの体幹機能障害と診断され、運動や歩行に不自由があるそうだ。大学で経営情報を専攻した中田さんは、就職活動中にハローワークの合同説明会に参加し、2004年に入社した。これまでに専門ソフトを使った産業廃棄物管理票のチェック作業や、大がかりなシステムデータのとりまとめ業務も任されてきたそうだ。左上半身が食堂でトレーを運べないといった苦労もあるが、「見かけた同僚たちが気軽に助けてくれ不自由なため、社員ます」と笑顔で話す。中田さんは現在、社内で人権啓発研修の講師も務めている。昨年だけで2千人超の従業員を相手にオンラインで話した。「自分でも勉強しながら、全従業員に受講してもらうことを目標に日々、伝える努力をしています」と意欲的に語ってくれた。中田さんと同じ東京支店人事部第4グループの若わ狭さ天て太たさん(25歳)は、大学で体操競技に打ち込み、卒業後は実業団に入ることが決まっていたという。ところが卒業式の10日前、吊り輪の練習中に落下し、頚け椎つ損傷で肩から下に麻ま痺ひが残った。そして、国立障害者リハビリテーションセンターで1年間のリハビリ後、当機構が運営する国立職業リハビリテーションセンターで建築CADを1年学んだそうだ。就職先に清水建設を志望した理由は「会社のホームページで、障害のある従業員が主役のチャレンジフォーラムというイベントを知り、働きやすい環境だと感じたから」だという。国立職業リハビリテーションセンターの紹介で2021年4月に入社した。7いいかさんか職場では、経理業務などデスクワークを担当しているが、両手の握力がほぼないため、自分なりに工夫もしている。例えば、過去の伝票を棚から探し出す作業が困難なことから、あらかじめ伝票をスキャニングしておき、必要なときはすぐにパソコン上で確認できるようにした。タイピングも困難なため、スマートフォンのフリック入力で操作できるソフト「フリックタイパー」を使っている。上司の横瀬さんは「本人と相談して、会社で購入しました。若狭さんにかぎらず若い人はフリック入力のほうが速いようですね」といい、こう話す。「彼は指が動かない。『だからできない』ではなく、『どうしたらできるか』を考えるだけです。作業で困難な部分をカバーする方法を一緒に考え、苦手ではない部分の仕事の幅を広げています。彼の長所は、人とのコミュニケーション力や発信力なので、最近は社員教育の業務にも参加してもらっています」若狭さんは車いすラグビーにも挑戦している。社会人チームに所属し月1回、福島県での練習に参加。「夢はパラ五輪出場です」と語る若狭さんに、横瀬さんも「彼が競技を続けられるよう、部内で情報を●社内講師として啓発に努める  各部署で働く従業員のみなさんスマートフォンで入力業務を行う若狭さんフリックタイパーやトラックボールを使いパソコンを操作東京支店人事部第4グループの若狭天太さん研修受講者リストの管理業務を行う中田さん東京支店人事部第4グループの中田雅己さん

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