働く広場2022年8月号
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の明るい笑顔が印象的だ。加藤さんが大学4年生の冬に、創業者である父親が病で他界。生物学を専攻し、野球が大好きだった青年が教職を諦め家業を継いだ。つくりかけだった工場を完成させた1年後、知人から障害のある人の受け入れを打診される。大学では教員免許を取得し、野球部の選手兼監督でもあった加藤さんには、「教えればだれでも伸びる」という確信があり、受け入れを承諾。すると、やってきた4人は児童養護施設出身で、帰るべき家がなかったため、加藤さんの母、祖母とともに寝泊まりをするようになる(そのうちの一人は、いまも在職しており、今年還暦を迎える)。人数が増えてくると、住んでいたマン■    ションの同じ階に数部屋を借り、集団生活をするようになった。1991(平成3)年には工場近くの建物を社員寮とした。その後、寮としての運営より、行政による指導も入るグループホームの方が運営体制がしっかりすることから、2011年には株式会社加藤福祉サービスを設立し、2016年にグループホーム「ねのしんさか」を開設した。2017年には就労継続支援B型事業所「就労支援施設ねのわーく」を開設。会社よりも手厚い支援が必要な、「ねのわーく」の利用者25人が、別工場でクリーニング業務にいそしんでいる。そして近隣の土地を購入し、2019年に少人数ユニットの新ホーム「ねの建築、現在は36人が入居している。しかしいまでも、集団生活に不慣れな新入社員や特別な配慮が必要な社員は加藤さんの家族と一緒に生活し、慣れてからホームへ移行させていくという手厚さである。「共同生活の最大の利点は、『集団効果』です。仕事に行くのが面倒だと感じるときも、ホームのみんなで「さあ、行くぞ」と支度して一緒に出かけていけば、休むことはなくなりますよ」と、加藤さんは語る。ホームの責任者は加藤さんの奥さまの芳■子■さんで、常に社員の味方であり、困りごとは直接社長にかけあってくれる、社員の母的存在だ。一日の仕事を終え、自分が心から安心してくつろげる環境に帰れることは、社員にとって、このうがっこうまえ1」をえない幸せであろう。プライベートな空間はもちろん確保されているが、広いリビングダイニングで仲間とゆったり過ごすこともできる。芳子さんが企画する誕生日会、ハロウィン、クリスマス、正月などの行事もたいへん充実しているそうだ。ほかにも定期的に映画を観に行ったり、屋外でのバーベキュー、また年に一度は社員の家族、出身学校や養護施設の先生も招き、ホテルでのクリスマス会で労をねぎらう。本当に家族のような雰囲気だという。「土日も家には帰らないのが、ほかのホームと違うところでしょうか。家庭としてのグループホームは全体としては多くないと思うのですが、うちのように、家がない社員にはそれが必要なんですね」今年6月に完成した新築のホームはユニットが小さく(定員4人)、少人数になるので、いまよりもさらに一人ひとりに目が届くようになる。「その代わり、誕生日会が少し寂しくなりますね」とたずねると、「全員が集まれる管理棟をつくったので、誕生日会は毎月合同でやりますよ!」とのこと。見守りは細やかに、楽しいことは大人数で。これが同社の社風であると再認識した。はじまりは社長一家との同居からグループホームの特色と運営のコツプレス機にユニフォームをセットし、アイロンがけを行う機械で畳まれたユニフォームを社員が確認し形を整える乾燥を終えたユニフォームが自動折り畳み機に運ばれる働く広場 2022.822

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