働く広場2022年8月号
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いることが気になります。できないことは、できるに越したことはない。できないならやらなくていいよ、ではなく、効果的なトレーニングでできることを増やすのが、その人の可能性を広げ、生活を豊かにすることだと思います。一人ひとりをよく見て、個別にきちんとした評価をすることがとても大事です」障害のある社員が活躍するには、業務をていねいに教えたり、苦手なことをサポートしたり、一緒に働きながら指導できる社員の存在が不可欠だ。同社には福祉を学んだ有資格者もいる。その福祉のプロともいえる人が、クリーニングの技術を学びプロになっていく。障害のある社員が6割を占める同社に、障害に対する理解・知識がない人が応募してくることはあまりないだろう。それでも、新卒で入ってくる社員などに、どのような社員教育を行っているのかをうかがった。「障害者を支援する社員に対して、特別な社員教育は全然できていません。ただ、障害のある仲間に対して、『仕事でむずかしいことがあっても大丈夫だし、これから少しずつ覚えていこう、私もわからないからね、まず会社に慣れていこう』と、これがうまく伝えられれば、スタートできると考えています。障害のある人たちも、指導する社員をよく観察しています。ポイントは人間関係の構築です。仕事はいくらでも習得させることはできるのです。これから入社してくる若い人たちも、こういう仕事を面白がってくれたらいいと思います」「例えばプロ野球選手は引退してから解説者になったり、自分の店を開いたり、いろいろな働き方ができる。でも障害のある人は、そう簡単には仕事を変えて働けないのです。クリーニング屋さんがダメになったからといって急にケーキ屋さんでは働けないでしょう。そうだとすると、雇用する企業はある程度、責任を持ってやらなくてはならないと思います。40年も働いてきたら、その後の職場を用意するために就労継続支援B型事業所が必要になる。60歳で定年になった人は、いずれB型に移ってもらうつもりです。私たちはB型をつくることができて幸せです」障害によっては、通常よりも老化が早   ■ く、機能が低下していくケースもある。だからといってすぐに解雇もできないことが多くの企業で課題になっている。現在、福祉施設から、就労移行支援事業所を利用して、企業へ移行していく流れはあるが、就労継続が困難なときには、企業から福祉への移行をもっとスムーズにできる必要がある、と加藤さんは考えている。「高齢になり、運転が危険になるので運転免許証を返上することと同じだと思います。いくら運転したいといってもリスクがあるのだから、そこをきちんと評価して、本人にも納得してもらって、福祉に移行するルートをつくる。この仕組みができていないから、理不尽と感じる辞めさせ方になるのではないでしょうか。高齢になればいままで実家でできていた生活面の整備が困難になり、実家からグループホームに入る必要もでてきますね」社員の面倒を一生見る覚悟の会社であるから、高齢になって機能が低下した社員でも働き続けられる環境を整備している。老化を遅らせる体力強化に、本腰を入れて取り組むことも、すべてがつながっている。加藤さんは5年前、東北大学の権■奇■哲■■■支援する社員への社員教育企業から福祉への移行の必要性課題は安定永続経営「ねの しんさか」のリビングルーム2016年に開設されたグループホーム「ねの しんさか」では、10人が共同生活を行う働く広場 2022.824

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