働く広場2022年9月号
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就労継続支援事業所への作業委託も島根県の養護学校からも覚えたそうだ。「ずいぶん作業には慣れました」という飯隅さんだが、いまも一番気をつけているのが「小さなパーツ」だ。以前、うっかり取り忘れてしまい、あとで気づいたときには、すでにほかの切れ端と一緒に処分されてしまっていたことがあった。裁断グループの上司の藤ふ田た寿と治はさんは、「見落としは私たちも当然ありうるミスです。本人には『一番小さなパーツから取るようにしよう』などとアドバイスしました」という。また藤田さんは、「飯隅さんは、まじめに作業に取り組むところが一番の長所です。作業に多少時間がかかったとしても、確実に正確に裁断してパーツを揃えてもらうことが大事9じしるです」と、飯隅さんの着実な成長を見守っている。特別支援学校を通して就労支援機関とのつながりもできたAsahichoでの作業の一部を、就労継続支援事業所に委託することも増えてきたという。依頼するのは、縫製工程の最後の部分である、糸切り処理や糸くずの除去などだ。舘上さんが説明する。「昔は、近所のおばあさんたちが内職で行ってくれていたのですが、どんどん引き受けてくれる人が減っていきました。代わりにやってくれるところがないか特別支援学校の先生に相談してみたところ、卒業生が通っている福山市や島根県の就労継続支援事業所が手をあげてくれました。いまは糸切りや仕上げアイロン作業をしてもらっていて、とても助かっています」特別支援学校の卒業生採用は、2018年から島根県内でも始まった。ここでもでは、工場高卒採用向けの会社説明会などで、島根県立出雲養護学校の先生から声をかけられ、1人の女子生徒を紹介されたという。「実習先となった雲南市内の工場は、従業員の平均年齢が60歳以上ということもあり、その生徒は、職場内で孫のように見守られながら、がんばり屋さんの性格を活かして仕事を覚えていったようです」と栗原さん。入社後は、通勤しやすいよう車の免許も取得したそうだ。「彼女は現在、正社員として働いてもらっています」と栗原さんは話す。出雲養護学校からは今年も、男子生徒の職場実習を受け入れている。取材中、久田さんや飯隅さんたちのことを「わが社にとって、なくてはならない大事な戦力です」と口にしていた舘上さんは、こう語る。「特別支援学校の生徒さんたちは、せっかく働くための授業や実習などを受けているのですから、このことをもっと多くの企業に認知してもらい、受け入れ企業が増えて、彼らが社会に出てもしっかり働いていけるようになってほしいと思います。私たちはこれからも、彼らが就職につなげていける足がかりとして、実習の場を提供し続けていくつもりです」飯隅さんの指導を担当する裁断グループの藤田寿治さん裁断機が生地を切り出す。細かいパーツもあるため注意が必要裁断機を操作する飯隅さん

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