働く広場2022年9月号
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POINT1234筑波技術大学は、茨城県つくば市に位置する、視覚障害者・聴覚障害者のための国立の4年制大学である。つまり、視覚障害もしくは聴覚障害のある人でないと入学することができない大学である。筑波技術大学は当初、筑波技術短期大学として設置・開学した。現在、短大の開学から30年以上が経過しており、2017(平成29)年には開学30周年の行事が行われている。大学の学部在籍者数は、2021(令和3)年5月現在で310人程度となっている。また大学院修士課程も設置されている(大学院は、視覚障害・聴覚障害がなくても学ぶことができる場合もある)。筑波技術大学には、筑波大学を挟むようにして、二つのキャンパスが設置されている。一つは聴覚障害のある学生を対象とした天あ久く保ぼキャンパスであり、もう一つは視覚障害のある学生を対象とした春日キャンパスである。今回の取材では、まず天久保キャンパスを訪問し、続いて春日キャンパスを訪問した。なお、取材に際しては、大学に取材を申し込みていねいに対応いただいたことに加え、同大学障害者高等教育研究支援センターの後ご藤と由ゆ紀き子こ助教にもお骨折りいただいた。藤と伸の子こ教授、障害者高等教育研究支援天久保キャンパスには「産業技術学部」が置かれている。同学部は、情報科学や先端機械工学、建築学、福祉機器工学などの工学的な支援技術学を学ぶことのできる「産業情報学科」と、クリエイティブデザイン学やデザイン学的な観点で支援技術学を学ぶことのできる「総合デザイン学科」がある。天久保キャンパスでは、まず就職担当である、産業技術学部産業情報学科の加かセンターの後藤由紀子助教にお話をうかがった。入学資格は、聴覚障害があるということで、具体的には「両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上の人、または補聴器などの使用によっても通常の話声を解することが不可能、もしくは著しく困難な人」となっている。このような条件があるものの、実際に  ま   う  ぶう    のか、特別支援学校(聴覚障害)出身か、は入学前にどのような教育を受けてきた一般高校出身かなどは学生によってバラバラだという。また、入学前のコミュニケーション手段についても、手話が十分身についている人もいれば、手話を使った経験があまりない人もいるとのことである。入学時点では手話に関する経験はさまざまであるため、入学して最初の時期に手話の練習を行う機会(例えば、「手話コミュニケーション入門」などの授業)を設定しているとのことである。そして、同じ聴覚障害のある学生とのコミュニケーション手段の一つとして、手話コミュニケーションに慣れることを支援している。つくば市は、2005年につくばエクスプレスが開業し、私がつくば市に在住していた1990年代から通勤・通学事情が大きく変わったが、それでも産業技術学部の学生は9割が寄宿舎生活を送っているとのことである。この寄宿舎は天久保キャンパスに通う学生用としてキャンパス内にあり、「学住近接」となっている。一般の大学同様、あるいはそれ以上に、キャリア教育に力が入れられている。具体的には専門の勉強が中心とな筑波技術大学の概要天久保キャンパス在学中のキャリア教育など働く広場 2022.9国立大学法人筑波技術大学 天久保キャンパス障害者高等教育研究支援センターの後藤由紀子助教産業技術学部産業情報学科の加藤伸子教授21同じ障害種別の学生コミュニティを用意することで安心感を持ってもらい、主体的に活動する経験を提供社会で活躍する先輩をロールモデルとして、将来について考える機会を設定する実質的な「インターンシップ」の機会を確保し、就職につなげる社会で活躍するために必要な「ITスキル」を高めるための充実した教育を実施

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