働く広場2022年9月号
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ているということ、1週間くらいのインターンシップも体験できた、ということもあります。エンジニアになるというのは、入学当初から考えていたわけではなく、2~3年生くらいから就職について考えるようになり、最終的にエンジニアを目ざそうと思いました。高校時代は特別支援学校(視覚障害)に通っていましたが、将来について正直『こうなりたい』という思いはなくて、部活など、そのときやりたいことに注力していました。ただ、高校時代の職業体験の授業で、事務の作業にパソコンを使った経験があることから、パソコンを使う仕事を考えるようになったと思います。視覚障害のある高校生などの後輩に伝えたいことは、『パソコンに触っておけ』ということでしょうか。選択肢を広げるという意味でも」続いて、八や染そまどかさん(22歳)、保健科学部情報システム学科4年生。「IT企業の内々定を得ています。ビジネス職で人事本部もしくはカスタマー本部配属予定と聞いています。これまでに決め手は、社風や企業理念が、私の性格や考え方と一致していたことです。視覚障害者の雇用実績はあまり重視していませんでしたが、大学の先輩が在籍していたので安心感はありました。もともと人を支援する業務に興味があったのですが、情報社会ということでだれかの助けになるのはITだと考え、この学科で勉強しています。私は盲学校の出身ですが、盲学校では、鍼灸の専攻科に進むか、企業への就職が中心で、大学に進学する生徒は珍しかったと思います。この大学は少人数ですが、それでも世界が広がったと思います。盲学校で重複障害ではない生徒は自分一人だけでした。視覚障害のある高校生など後輩に伝えたいことは、『やりたいことに向かって自分のやり方で進むとよいのではないか』ということです。盲学校という世界だけでは狭い場合があると思います。大学でサークルの先輩たちと交流できたことは、進路選択にも役に立っています。私の選んだ職種に近い仕事をしている先輩が多いのですが、人事業務の話など参考になります」視覚障害者のための機器については「支援機器室」を設けて展示しており、情報提供の場として非常に充実していた。また、学内の視覚障害に配慮した設備についても案内いただいた。拡大読書器や点字ディスプレイがさまざまな教室で豊富に置かれていたり、教室の入り口の向かい側の手すりに切り込みを入れて、入り口の位置がわかるようにしたり、学ぶための環境が整備されていた。今回、筑波技術大学での取組みを取材させていただき、障害特性への配慮だけでなくキャリア形成という面でも効果的な取組みがなされていることを実感した。大前提として、パソコンを中心とした専門性を高めるための教育プログラムが展開されていることが、視覚障害や聴覚障害のある学生を社会に送り出すうえで有効なものとなっていることを、まずあげておきたい。そのうえで、視覚障害や聴覚障害という同じ障害種別の同級生たちとの集団活動、また教員の目が行き届いた少人数での教育のほか、障害のある学生が各コミュニティに参画し、そのなかで受容され安心感が育まれることにより、学生にとって社会という海に出るうえでの「母港」としての意味が、筑波技術大学にはあるのではないかと感じた。加えて、社会とのかかわりを含む主体的   め      な活動の経験が積めること、先輩をロールモデルとして、将来について考えられる環境にあること、一定期間を確保した意味のある「インターンシップ」の機会が確保されていることも、非常に有意義で効果的だと考えられる。今後の筑波技術大学の活動と発展に期待したい。視覚障害に配慮した設備おわりに働く広場 2022.915社ほど受けました。この会社を選んだ廊下に設置された手すり。教室入り口の対面に切り込みを入れ、入り口の位置を示している学生1人に1台設置されたパソコン、拡大読書器などが並ぶ「実習室」拡大読書器などが展示された「支援機器室」。学生が機器を試用することができる25

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