働く広場2022年9月号
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3年目には正社員にる。その後、栗原さんは福山北特別支援学校の授業参観にも足を運んでみたという。「印象的だったのは、生徒たちの社会的自立を目標にしたカリキュラムがしっかりと組まれていたことでした。実習の授業も多く、実践的な内容に感心しました」じつは栗原さんは以前、職場の従業員から「息子が特別支援学校から一般企業に就職する」と聞いたことがあった。何度も職場での実習を行い、うまくマッチングして採用されたという話を思い出した。そこで本社工場で、福山北特別支援学校から受け入れた生徒が、久く田だ大だ介すさんいけ6した(25歳)だ。自宅から自転車で通える距離に住んでいることも好条件だった。1週間ほどの職場実習では、アイロン作業などを行ってもらった。作業中の手の動きが少し遅いようだったが、現場の従業員たちからは「しっかりしていて、よい生徒だ」とほめる声が多かった。そこで、「採用してみようということになりました」と栗原さん。久田さんは、1日7時間勤務の有期雇用の契約社員からスタート。ほかにも一般の高校から4人が正社員として入社した。久田さんが勤務している本社工場内を案内してもらった。業務用ミシンがずらりと並んだ場所が、製造部門のメインである製造部縫製グループだ。ここでは、あらかじめ裁断された布地の服のパーツごとに1人ずつ縫製工程を担当し、最後にすべて縫い合わせて完成する。十数人のチームで1日200着分ほどを仕上げていくそうだ。舘上さんが説明してくれた。「大容量になる商品は海外の協力工場などでつくっていますが、在庫の追加分や試作品などについては国内工場で受け持っています。縫製の全工程を、一つの工場でまかなえるのが強みですね」その一角で久田さんが、黙々とミシンに向き合っていた。「職場実習のときに、周りの人がやさしく教えてくれたので入社を志望しました。入社後は、いろいろな縫製作業を覚えるのがたいへんでした」と話してくれたが、舘上さんは久田さんの上達ぶりに目を見張ったという。「彼は、とても好奇心が旺盛なようで、ほかの従業員がミシンで作業している様子を、いつもじっと見ていました。『できそうか?』とトライさせてみたところ、しっかりやり遂げたので驚きました」確実に担当できる作業が増えていった久田さんを、職場の先輩たちは「彼なら大丈夫」と太鼓判を押した。翌年フルタイム勤務になり、3年目には正社員となった。正社員になると、同社の労働組合規約により組合員になれるほか、昇給があり賞与や退職金ももらえるようになる。これまで久田さんを指導してきた、縫製グループの秦は良よ江えさんは、「久田さんは入社後に初めてミシン作業にかかわりましたが、素直な性格で、教えたこともすぐに理解してくれたので、スムーズに上達しました」と話す。また、一緒に働く自動ロックミシンで作業を行う久田さん縫製グループは、工場の要となる部署だ縫製グループで働く久田大介さん

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