働く広場2022年9月号
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技能検定やアビリンピックへの挑戦なかで、久田さんの大きな長所にも気づいたそうだ。「1日を通して、業務のペースを変わらず維持できるのは感心するほどです。安心して一定量の作業をまかせられます。飲み込みも早いですし、今後もどんどんがんばってほしいですね」舘上さんによると、久田さんの同期入社の4人は、入社して数年のうちに辞めてしまったという。「障害があろうとなかろうと、だいたい入社時はミシン作業が未経験です。それが数年のうちに予想以上に得意になる人もいれば、どうにも向かなくて辞めてしまう人もいます。そのようななか、久田さんは今年で入社7年目になりました」高卒採用をきっかけに、舘上さんたちは、若手のための人材育成プランも考えた。その目玉が、国家検定である「技能検定」(※2)の取得推進だ。舘上さんは「せっかく縫製の仕事をするのですから、職人として向上心を持って努力し続けられる目標があれば、日々のやりがいも出てくるはずです」と説明してくれた。まず目ざしたのは、「婦人子供服製造」職種の2級だ。取得することができれば、毎月資格手当もつけることにした。検定内容は、裁断ずみの材料と作製ずみの両袖を使ってブラウスを1着製作するというもの。近隣の同業他社でも技能検定の合格者を出していると聞き、従業員たちと一緒に見学にも行った。実技と学科の具体的な試験内容について教えてもらったが、従業員からは「こんなにむずかしいのはとても無理」という感想があがったという。そこでちょうど舘上さんたちは、厚生労働省の「ものづくりマイスター制度(若年技能者人材育成支援等事業)」があることを知った。広島県職業能力開発協会などから「ものづくりマイスター」と呼ばれる指導員を一定期間、無料で派遣してもらえるというものだ。さっそく本社工場では、2016年から年間20回程度派遣してもらうことにした。「会社ぐるみの取組みとして、勤務時間内に検定に向けた訓練を行い、検定料や写真代も会社が負担しました。ここまでやる会社は、なかなかないと聞きました」と舘上さんは胸を張る。特訓の甲斐もあって2018年に初めて1人が2級に合格。そしてこれまでに5人が合格している。さらにマイスターのすすめで、技能五輪にも挑戦することになった。栗原さんは「そこで初めてアビリンピックの存在を知り、だったら久田さんも挑戦してみようという話になり※2 技能検定: 働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、131職種の試験がある。試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができる全国アビリンピックに向け、久田さんが練習で製作したオーバーブラウス昨年「第41回全国アビリンピック」の「洋裁」種目に出場。久田さんに、作業の説明を行う秦さん競技中の久田さん(撮影:岩尾克治)久田さんの指導を担当する縫製グループの秦良江さん7

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