働く広場2022年10月号
23/36

精神障害のある人の雇用状況は急激に進展していますが、企業は雇用管理面で悩んでいることが少なくありません。例えば、「職場でトラブルが多く、そのために一緒に働く同僚が疲れてしまっている」、「採用したが適当な業務がない」などです。このようなときに、適切な配慮への参考となるのが、本人と長くつき  き     合ってきた医療機関からの情報です。雇用の継続に際して精神科医療機関との連携が必要かつ有用なのは、第一に、患者さんが就労について最初に相談する相手は主治医であることが多く、また、障害を前提とした福祉施設や労働機関に相談に行くことに抵抗感をもつ人が少なくないからです。第二に、就職後も継続して通院する人が多いことから、医療機関は本人に生じる状況の変化や再発などの予兆をキャッチしやすい立場にあるからです。就労継続に必要な継続的なモニタリングができるため、企業や地域の支援機関から意見を求められることも多く、安定的な就労にとって非常に有用だといえます。そこで、精神障害のある人の職場定着に医療機関がどのようにかかわっているかを知りたくて、企業と医療機関の双方を取材してきました。株式会社IHI(以下、「IHI」)は、1853(嘉永6)年創業の日本初の近代的造船所「石川島造船所」を起源とする総合重工業グループとして、資源・エネルギー、社会インフラ、産業機械、航空・宇宙の四つの事業分野を中心に新たな価値を提供しています。売上げは年間約1兆2千億円で、社員はIHI単体で約8千人、グループ全体で約3万人弱が働いています。人事部の「本社人事グループ」アシスタントマネージャーで看護師の関せ根ね理り絵えさんにお話をうかがいました。「当社の障害者雇用は、もともと身体に障害のある人を中心に各部門に採用していたそうです。1992(平成4)年に障害のある社員を集合させた「業務支援担当」を設けて、効果的な業務支援と職場定着の推進を図っています。現在では、IHI単体では約200人の障害のある社員を雇用しております。2018年に初めて、5人の精神障害のある人を新規採用しました。そのとき、私も看護師の資格を持つサポートスタッフとして採用されました。この5人の新規採用者のうち、3人が現在まで継続して勤めています。3人とも主治医との定期的な受診と服薬調整のほかには、体力的にも能力的にもほとんど問題はなく、また、私との面談もほとんど必要がない状況です。また、精神科医療機関を経由して入社はじめにIHIの障害者雇用POINT123 株式会社IHIの本社株式会社IHI人事部本社人事グループ アシスタントマネージャーで看護師の関根理絵さん働く広場 2022.10精神障害のある人の就労支援のあり方を知る精神科医療機関が行う就労支援の実際精神科デイケアでの就労支援プログラム(1)精神障害者の定着支援21

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る