働く広場2022年10月号
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した事例では、退院直後から特に生活支援において個別的で継続的な対応が必要な人がいました。ですが、医療機関から引き継いだ就労定着支援事業所の担当者が大きな力となり、日常生活が次第に安定してきました。本人自身も、『その担当者との出会いによって精神的に落ち着いた』とふり返るほどです。そのことが、業務の遂行に著しい効力を発揮して、今日まで継続して働き続けられています。つまり、支援機関の担当者との出会い         うら   と継続的な支援が、職場定着を決定づけているといえるでしょう。それほど、支援者の資質やかかわり方が大きな影響を与えるということです」次に関根さんからは、こうした就労支援機関とは異なる支援を受けている事例も紹介していただきました。それが、2020(令和2)年に採用された後も、医療機関による直接的な就労支援が続いている小お野の寺で祐ゆ子こさんです。小野寺さんに、発症から今日に至るまでの経過をうかがいました。「私は、統合失調症を20代後半に発症して、精神病単科の吉祥寺病院に半年ほど入院しました。その後、退院直後から同院併設のデイケアセンターに10年近く通いました。自宅から病院まで1時間以上かかるのですが、社会に出たいという一途な想いから、ほぼ毎日通いました。デイケアのプログラムでは、生活リズムを整えながらさまざまな院内作業をしました。生活リズムに慣れるとハローワークでの求職活動も始めたのですが、就職には結びつきませんでした。ですが、病気でかたくなになっていた気持ちも、プログラムをこなしていくうちに、次第にほぐれていきました。その後、デイケアで就職率と定着率の高さを売りにした“就労グループ”(23ページ参照)が新たにプログラムとして開始されたので、ただちにそれに応募しました。1年ほどこのプログラムに参加した後、IHIでの職場実習を経て入社しました。現在の仕事は、デスクワークが中心で申請書類の作成を中心に、週40時間の勤務です。入社した当初は、8時30分から年ほどかけて現在の勤務時間にまで延長できました。また、吉祥寺病院の主治医に、毎月、定期検診を受けています。そのとき同時に、デイケアで担当だった作業療法士さんとも面談します。これらを通して、現在の仕事の状況や困っていること、あるいは、生活に関する相談をしています。さらに、毎週末にはデイケアの担当者に電話やメールで定期連絡をして、体調面などの報告をしています。こうした多重の支援体制のおかげで、体調が崩れることはめったにありません」小野寺さんの就労支援は、主治医のいる医療機関からの直接的な支援を受けながら、医師の診断と調薬そしてデイケアスタッフとの定期面談や毎週の状況報告が継続されていることが特徴です。関根さんは、こうした支援の利点として、次のことを指摘します。「この体制は、就労支援機関を介さないで、主治医や関係スタッフからの医療的 小野寺さんが働く本社人事グループ小野寺さんは、申請書類の作成などを担当している株式会社IHI人事部本社人事グループで働く小野寺祐子さん14時30分までの短時間勤務でしたが、1(3)医療機関との連携の利点(2)医療機関による直接的支援22

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