働く広場2022年10月号
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要だと考えているからです。企業支援では企業が障害者雇用を独自で運用できるような仕組みづくりも行います。職場開拓では東京都の各ハローワークと連携し実施しています。しゅう吉では一般就労の定義を、最低賃金以上の時給で、特例子会社や就労継続支援A型事業所ではない一般企業で働くことと位置づけています。本人向けのプログラムとしては、①就労準備性(ストレスとその対処、注意サインとその対処など、就労後に必要となってくる事柄)を身につけるためのプログラムである“就労プログラム”、②パワーポイントを使ったプレゼンテーションを行うとともに、マーケティングの視点を学ぶ“企業研究”、③論理的に物事を考えたり、それをふまえたコミュニケーションの仕方を学ぶ“ロジカルシンキング”の三つのプログラムを基盤としています。加えて、④認知機能を向上させる“認知機能リハビリテーション”、⑤自身の取り扱い説明書を作成する“WラRAP”などのプログラムを補完的に提供しています。本人への支援としては、デイケアでは   ップ      きます。それにより、就労後のリスクに個別担当制を設けており、CMが生活・病気の支援を行い、ESが就労支援を行います。この担当制が就労後も続いてい対しても早期発見・早期対応ができるよTeam)を定期的に行い、本人のニーズやうな仕組みをつくっています。しゅう吉では、専門的多職種の支援者によるアプローチであるMDT(Multidisciplinary 課題の把握、それに対しての支援の方向性やスタッフの役割分担、本人がどのように活動していくかを話し合います。デイケア内では情報に漏れや抜けが起きないようにするために、グループ内ミーティングを毎週、全体ミーティングを月に2回行い、情報の共有を図っています。就労後はデイケアチームが職場定着に向けた支援を継続します。基本的には、①月1回の外来診察の後にデイケアチームとのMDTで現状と今後の確認、②毎週金曜日に電話やメールでの本人状況の確認、③3カ月単位での職場訪問で今後のキャリア、業務内容などの打合せ(徐々に期間を延ばし、最終的には何か起こったときのみの対応)、④必要に応じて土曜日の個別面談を行っています。こうした支援体制を継続することで当事者たちは勤務を継続しています。しゅう吉を始めて3年経ちますが、おかげさまで就労率は86%、就労後1年後の定着率は97・3%、しゅう吉への参加から就労までの平均期間が6・2カ月という結果となっています。また、コロナ禍の最中にあって、ほかの二つのグループの利用者は大きく減少しましたが、“しゅう吉”は変わりませんでした。就労支援は社会的な需要が高く、就労後も継続的な支援を行うことで、病院の経営にも貢献すると考えています」清澤さんは精神科医療機関の就労支援を“医療単独型就労支援”と名づけています。その特徴についてうかがいました。「最大の利点は、医療的な支援、就労と定着支援、生活支援の“医・職・住”の支援をシームレスにワンストップで行えるということです。精神症状がもっとも悪い状態から回復に至るまでの一連の流れを把握している精神科医療機関が、当事者と企業の双方にかかわることで、就労支援と職場定着を併行して実施できます。回復までの経過や調子を崩しやすい状況などを明確に把握できるとともに、企業自身が症状悪化のサインとその対処の仕方について直接知ることができます。ほかにも、専門的多職種チームで就労支援を行えるということも“医療単独型就労支援”の利点となります。主治医は就労を前提とした服薬調整や病状のモニタリング、看護師は病気とうまくつき合いながらの生活支援、作業療法士は業務分析やストレッチなどのレクチャー、心理士は心理検査をふまえたアセスメントやリラク 就労に向けたプログラムの様子(写真提供:吉祥寺病院)デイケアセンターは、外観内観ともにログハウス風(3)医療単独型就労支援24

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