働く広場2022年11月号
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の木会が運営する就労継続支援A型事業所も見学した。この施設は丸和の工場内に設置され、丸和と同じリネンサプライ業務を行っている。利用者は40人、作業内容は丸和の工場とほぼ同じだ。今回取材を終えて、これまでの取材と異なる点をあらためて確認すると「丸和が特例子会社ではなく会社のなかでの就労支援に取り組んでいること」、「障がいのある社員の定着率が高いこと」の二つが印象的だった。これまでの障がいのある人への支援      ちうるがいがあっても働ける」という思いが多は、できないことをまず評価して、それに対して支援するということがあたり前だった。近年、特に「障害者差別解消法」施行後は、障がい当事者の「働きたい」という意思を尊重して、「できることを探す」、「働けるように支援する」ことが、障がいのある人の就労支援の基本に変わっている。丸和では、創業者の「障くの社員に受け継がれ、会社組織のなかで「働けるようにする支援」のノウハウを蓄積してきたことが、10人の雇用と定着率の高さにつながっているのではないかと考える。インタビューのときに、丸山さんが3人の社員のことをよく知っていて、家族のこと、生活や人生のことなど、互いにフランクに話し合っている場面がとても印象に残っている。「障がいのある人を働けるように支援する」とは、会社が単に働く場を提供するだけではなく、就職後の生活、人生、個々のニーズなどに対応しながら本人を支えていくことであり、その大切さを丸山さんの自然な対応から学んだ。障がいのある人の就労支援が雇用率だけで判断される傾向があるが、私は定着率も重要であると考えている。総務部課長の中尾さん、生産事業部係長の平野さんに丸和の定着率の高さについてたずねたが、「特別なことはしていません」との返事が返ってきた。しかし、前述の平野さんのインタビューで、担当者として心がけていると語った五つのポイントのなかにその答えが含まれている。五つのポイントは平野さんが日常行っている経験から得たものと推測できるが、特に「相談があったその日に話し合い、解決策を一緒に考える」は、障がいのある人の就労支援で取り組まれている「ナチュラルサポート」に通じる。障がいのある人の仕事ぶりがうまくいっている状態は、仕事内容や職場の配慮や本人の状態が絶妙に調整されていることが多い。しかし、ちょっとしたことで崩れてしまうこともあり、このような状況を防ぐ対応策として、就職後の本人と職場のタイムリーな相談対応が重要になる。このサポートが「ナチュラルサポート」である。当機構障害者職業総合センター主任研究員の春は名な由ゆ一い郎ろは「共生社会に向けた障害者就労支援ー分野横断的課題」(※)のなかで、「2009年の重度の聴覚障害者の調査データを見ると、聴覚障害の雇用の歴史は長いので、当然、職場で配慮がされているかと思いきや、実際は、﹃コミュニケーション﹄や﹃人間関係﹄に問題のあるまま働いている人の方が多いということが明らかになった」と報告している。「定着率の高さ」は1回の取材だけで軽々と論ずることはできないが、「ナチュラルサポート」と「コミュニケーションや人間関係に問題があること」に、障がいのある人の雇用と定着率解決のヒントが示されていると考える。丸和では、どんな障がいがあっても,本人の能力(強み)の発揮を支援しながら、働き方の個別性・多様性両面への支援をこれからも続けていかれることを期待したい。取材を終えて 働く広場 2022.11※社会保障研究, 2018, vol. 2, no. 4, pp. 469-483.社会福祉法人桃の木会が運営する就労継続支援A型事業所25(1)丸和の取組みから(2)定着率の高さ

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