働く広場2022年11月号
5/36

「緑の大地」を意味するフランス語から名づけられたという「株式会社テルベ」(以下、「テルベ」)は、北海道らしい雄大な緑に恵まれた場所にある。1994(平成6)年、当時のイトーヨーカ堂グループ(株式会社イトーヨーカ堂、株式会社セブン‐イレブン・ジャパンなど4社)と北見市の出資により、株式会社イトーヨーカ堂(以下、「ヨーカ堂」)の特例子会社として設立された。その後、2005年に株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下、「セブン&アイHD」)の設立にともない、セブン&アイHDの特例子会社として再認定された。テルベが北見市に設立されたのは、資本構成の1%をになう北見市の誘致もきっかけの一つだったそうだ。障害者雇用率が未達成だったヨーカ堂が、1991年に「ノーマライゼーション推進プロジェクト」を発足させ、各店舗での直接雇用拡大と並行して特例子会社の設立を検討していたところだった。テルベは、地元の「社会福祉法人萌も木ぎの会(当時の共同作業所「工房とみさと木の会」)が運営する福祉施設の利用者が」)」(以下、「萌一般就労できる受け皿としても期待され、隣地に建てられた。事業所は現在、本社がある北海道北見市と東京都千代田区の2カ所。北見事業所は従業員34人のうち障害のある従業員が19人(身体障害6人、知的障害13人)、コピーセンターを運営する東京事業所は従業員6人(うち知的障害1人)で、グループ5社をグループ適用した障害者雇用率は2・98%(2022︿令和4﹀年6月1日現在)だという。また、公益社団法人北見市シルバー人材センターの高齢者12人も一緒に働いている。ヨーカ堂から出向し、テルベ総務部のマネジャーを務める小こ林ば達た也やさんは、「私たちは設立以来、ノーマライゼーションの実践企業として、ハンディのある人もない人も、若い人も高齢者も、それぞれの特色を活かして就業できる職場づくりを目ざしてきました」と説明する。テルベは2017年に公益社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(現・公益社団法人全国障害者雇用事業所協会)の「障害者活躍企業」第1号に認証され、さらに、2020年には若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況などが優良な中小企業として、厚生労働省の「ユースエール認定企業」にも認定されている。やしえついけ3テルベで手がけているのは、椎し茸た事業と印刷事業の二つ。ちなみに北海道は、生椎茸生産量が徳島県に次いで全国2位の特産地でもある(※)。隣地の萌木の会と連携しながら、事業と雇用の安定を図ってきた。テルベでは設立時、萌木の会の利用者も含め障害のある従業員が20人近く入社し、その後は退職者が出るたびに採用してきた。地域の特別支援学校とも連携し、採用予定の有無にかかわらず職場体験・実習(インターンシップ)を毎年実施している。小林さんが説明する。「まず本人に、何のために働くのかを含め、一般就労に対する意識を確認します。6~8週間の実習を通して、一つひとつの作業の理解、わからないことを質問する姿勢、基本的なマナーの実践もうながします。無理をして一般就労を目ざし、あとで本人がつらくならないよう見きわめることも大事です」採用においては「グループホームへの入居」も重視している。地域の特別支援学校には道内から集まった寮生活者が多いため、就職後いきなり一人暮らしを始セブン&アイ・ホールディングスの特例子会社特別支援学校の生徒を対象にインターンシップPOINT123働く広場 2022.11障害者職業生活相談員の小林達也さん※農林水産省「令和3年 特用林産基礎資料(特用林産物生産統計調査)」総務部マネジャーで北見市の誘致で福祉施設の隣地に拠点。シルバー人材もともに働くグループホームなどの支援機関、家族を含めた4者面談で情報共有企業や地域の小中学校を対象にノーマライゼーションの発信活動

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る