働く広場2022年11月号
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設立28年を迎えるテルベではいま、高齢化する従業員への対応も大きな課題のひとつになっている。「加齢により生産性は下がりますが、安易に事務や軽作業に変えるのも、本人のモチベーション低下の誘因になりかねません」と小林さん。例えば知的障害のある50代の男性従業員は、30代で病気を患い、運動療法も兼ねて、軽作業から栽培ハウスでの作業に転向した。主治医からの「栽培ハウスで体を動かしているからこそ持病の悪化を防いでいる」とのアドバイスもあり、ハウスでの作業を続けている。また別の知的障害のある50代の女性従業員は、担当する印刷業務が大好きで意欲的だが、数年前に体調を崩し入院。その後も体力が追いつかず、週末になると起き上がれなくなる状態が続いた。そこで水曜日も休日にして週4日勤務にしたところ不調がなくなった。大石さんは「元気そうな様子に周囲から『週5日に戻しても』という声が上がりますが、油断は禁物です。慎重に様子を見ながら、安定して働ける環境を整えることが大切です」と話す。一方で時折、椎茸事業の“応援”にも出向いてもらっている。「同僚の助けになっているということが、本人にとって新たなモチベーションになっているようです」 テ浸ル透ベにで向は、け外て部に向けたノーマライゼーション推進にも地道に取り組んできた。北見事業所では、年間500人超の見学者受入れのほか、企業や学校への出張講演などを実施。障害のある従業員が、テルベで働くことや社会生活の体験などを語りながら、ノーマライゼーションのあり方を伝えている。セブン&アイHDの従業員向けには、広報紙「テルベ通信」を2009年から毎月発行している。最初のころは、北海道の美しい風景写真とともにテルベの存在を知ってもらう内容だったそうだが、近年は、従業員の働きぶりや事業内容などを積極的に紹介。その効果も出ていると大石さんが話す。「創刊100号記念で、感想を送ってくれた従業員へ椎茸をプレゼントする企画を行いました。すると広島にいる聴覚障害のある従業員からメッセージが届き、それを機に『どうしたらノーマライゼーションが浸透するだろうか』と意見交換が始まりました。セブン&アイHDの障害者雇用担当者も加わり、どう進めていくか検討する小さな一歩をふみ出しています」テルベの規模は設立時から大きく変わっていない。逆にここ数年は燃料高騰やデジタル化の波で、事業と雇用の維持が優先課題でもある。そのうえで、今後のテルベの使命について、小林さんは、「もともとテルベは障害者雇用率の達成が主目的ではなく、グループ企業にノーマライゼーションの理念を浸透させるためのノウハウなどを研究するために設立されたという経緯もあります。テルベのやり方をそのままグループ会社の直接雇用で実践するのは条件によってむずかしい部分もありますが、職場での工夫や改善点など、アドバイスできることも少なくないと思っています。30年近いテルベでの経験を活かした連携と発信に、さらに力を入れていくつもりです」と語ってくれた。柔軟な働き方で高齢化にも対応ノーマライゼーションのオフセット印刷機の調整を行う米澤さん印刷事業部で働く米澤利昭さん印刷事業部で働く富田雪乃さん富田さんは印刷物の梱包作業などを担当している7

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