働く広場2022年12月号
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業員を雇用しやすい環境になり、2019年には法定雇用率を達成しました。香川さんは、「一方で、障害のある従業員の人数が増えるにつれ、現場から、『障害のある従業員にどのように接したらよいかがわからない』という声があがるなど、新たな問題が生じました。また、『障がい者担当』に対しても、人事部による勉強会を一度開いたのみで、その後のフォローが不十分だったことや、異動による人の入れ替わりもあり、時間の経過とともにうまく機能しなくなっていきました。このような経緯があり、2021年に、本社内に各拠点をバックアップする『D&I推進課』が設置されました。D&I推進課では、障害のある人を雇用する環境整備だけではなく、仲間の一員として長く働き続けてもらうことを目ざして、『障がい者担当』をはじめ、従業員の理解を促進する取組みに注力しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンの専任のチームであるため、以前よりも細やかなバックアップができるようにもなりました」といいます。D&I推進課がまず初めに取り組ん  だのは、各拠点に配置された「障がい者担当」の立て直しのための勉強会です。オンラインで全国の拠点をつないで、「障害者雇用に関する基礎的な知識」や「障害別の一般的な配慮のポイント」などについてレクチャーしました。基礎的な内容の講座で一通りの知識を得てもらった後は、障害のある従業員に接するなかでの困りごとをアンケートで集め、Q&A形式で再度勉強会を開催。そして、「Q.必要以上に保護的な接し方にならないようにするにはどうすればよいか?」「A.仲間として受けとめ、成長させようと考えましょう」など、寄せられた質問に対して回答する『障がい者雇用Q&Aブック』として冊子にまとめました。「『障がい者担当』は、通常の業務を担当しながらその役割をになっており、障害者との働き方・かかわり方について特別な知識や経験のない者がほとんどです。試行錯誤しながら障害のある従業員と向き合っています。『周囲の理解が得られにくい』などの悩みには、『職場全体でプラスの効果があることを理解してもらったうえで、自然体で取り組んでいきましょう』というように、一つひとつの悩みにていねいに答える内容としました」と、香川さん。現在は、「障がい者担当」が代わったときに、必ず勉強会の録画を見てもらうことで、その役割への理解を深めてもらっています。またSGホールディングスグループ全体でD&I推進に取り組むための『わくわくダイバーシティ委員会』を、SGフィルダー株式会社ではD&I推進課が事務局となり、月に1回ほど開催しています。この委員会には各拠点の「障がい者担当」も参加し、障害のある従業員への接し方などについての意見交換の場としています。「全国の拠点のなかには、障害者雇用がうまくいっている拠点もあれば、あまり進んでいない拠点もあり、まだばらつきがあります。しかし、私たちD&I推進課で質問や困りごとなどの相<参考>「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」ウェブコンテンツ版「Q 障害者雇用に関する社内の支援体制はどのようにしたらよいでしょうか?」 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003krmk.html談の声を集約するなど、体制を整えたことで、障害者雇用に取り組む社内の意識が少しずつ高まってきているのを感じます。障害者雇用がうまくいっている拠点では、合理的配慮などに上手に取り組んでいる様子が見られます。事業所内では自分たちの取組みの価値に気づいていないことでも、ほかの事業所で役立てられることが多くあります。今後はそれらを、だれにでもわかりやすく、使いやすい形で言語化したり体系化したりして、水平展開をすることに力を入れていきたいです」と、香川さんは語ってくれました。勉強会や「Q&Aブック」で社内全体の理解を底上げ知識や経験の体系化が今後の課題「障がい者担当」育成のための勉強会の資料として作成された『障がい者雇用ガイドブック』と『障がい者雇用Q&Aブック』『障がい者雇用Q&Aブック』の内容例「Q 採用決定後、社内で行うことについて教えてください。」 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003kszb.html働く広場 2022.1211

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